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彼を思う菜穂子の気持ちがいじらしい~風立ちぬ
「風立ちぬ」と聞くと、私の年代では松田聖子のヒット曲を思い出します。某スナック菓子のCMソングとしても使われていました。ちなみに松田聖子は私と同い年です。
今回ご紹介するのは、世界に誇るアニメ監督、宮崎駿さんの「風立ちぬ」(7月20日全国公開)。このブログでアニメを取り上げるのは初めてです。
主人公は、ゼロ戦(零式艦上戦闘機)の設計者だった堀越二郎(1903~1982年)がモデル。ただし、小説「風立ちぬ」の作者堀辰雄(1904~1953年)を混ぜ合わせた人物像にしたそうです。不景気と貧困、病気、関東大震災など、厳しい時代だった大正から昭和にかけ、技術者としてひたすら「美しい飛行機を作りたい」と設計を続けた堀越の半生と、薄幸の菜穂子との愛が描かれています。
二郎は頭脳
私が心を打たれたのは、菜穂子の愛の深さ。もともと快活でしっかりした女性ですが、結核を患っているために床に伏せていることが多く、二郎と「普通」の暮らしを送ることができません。それだけに、少しでも二郎とそばにいたいと思う菜穂子の言動がいじらしいのです(この2人の関係は、小説「風立ちぬ」に出てくる「私」と「節子」と少しダブります)。
宮崎アニメに共通する、どこか懐かしい日本の自然や文化、暮らしぶりの繊細な表現は、相変わらず見事です。そしてタイトル通り、「風」を感じられる場面がそこかしこにあり、浮遊感が心地よい。二郎の夢に、イタリアの飛行機製作者カプローニ氏が時空を超えてたびたび現れる場面は、描かれている時代背景が重苦しいだけに、気分が解放されます。
主題歌は、松田聖子の「風立ちぬ」…ではなくて、松任谷由実(当時は荒井由実)の「ひこうき雲」。まるでこの映画のために書き下ろしたように、歌詞がマッチしています。あまりにも有名な曲ですが、私はユーミンが高校生の時に作った曲とは知りませんでした。すごい才能です!
一つ残念だったのは、映画のキャッチコピーにある「生きねば。」というメッセージが、今ひとつ伝わってこなかったこと。宮崎監督は読売新聞のインタビュー記事で「変動期の今こそ、ファンタジーでないものを作って、どう生きるべきかを問わなければ」と語っています。でも私には、この映画はファンタジーにしか見えませんでした。
苦しみや悲しみのどん底に落ちた人間が、それでもかすかな希望を見いだし、苦しみとともに生き延びようと、もがく――。そんな話なら「生きねば。」という言葉も響いてくるのですが、そうではない。厳しい時代にあっても、二郎は自分のやりたいことができるエリートで、空想に身を任せることもできます。何かこう、物語自体に「浮遊感」があって、主人公の切迫感や必死さが今ひとつ伝わってこない…。これはたぶん、好み(感性)の問題ですね。
さて、菜穂子が患っていた結核は、結核菌による感染症です。主に肺に炎症を起こします。昔は「肺病」などとも言われました。
映画で描かれた時代と重なる1910年代から1940年代までは、年間十数万人もの人が亡くなっていました。死亡原因の第1位で、まさに「国民病」。戦後、ストレプトマイシンなどの抗生物質が使われるようになって死者数は激減し、1955年には4万人台、1975年には1万人台、1983年には5000人台に減っていきました。
では、結核はもう過去の病気なのかと言うと、けっしてそうではありません。
2011年には2166人が結核で死亡。ちなみにこの年に新しく登録された患者数は2万2681人にのぼります。現代日本にも、まだこれだけの結核患者がいるのです。
公益財団法人・結核予防会のパンフレット「結核の常識2012」によると、せきが2週間以上続く、たんが出る、体がだるい、体重が急に減る、といった症状があれば、すぐに医療機関を受診した方が良いようです。結核と診断されても、薬を半年間毎日飲み続けると治ります。
結核菌に感染しても、必ず発症するわけではなく、免疫力が菌の増殖を抑えられなくなった時に発病します。予防には、十分な睡眠と適度な運動、バランスの良い食事が大事だそうです。結局、健康の基本を守ることですね。
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風立ちぬ観ました。
チャーミー
風立ちぬ観ました。感動しました。私はこの映画はファンタジーではなく辛い現実を描いていると感じました。二郎はやりたい事が出来ているとは言い切れない...
風立ちぬ観ました。感動しました。
私はこの映画はファンタジーではなく辛い現実を描いていると感じました。
二郎はやりたい事が出来ているとは言い切れないと思います。何故なら「私は美しい飛行機をつくりたいと思っています。」という言葉から、決して「戦闘機」をつくりたかった訳ではないという事が分かるからです。
『苦しみや悲しみのどん底に落ちた人間が、それでもかすかな希望を見いだし、苦しみとともに生き延びようと、もがく――。そんな話なら「生きねば。」という言葉も響いてくる』という事ですが、自分がつくった美しい飛行機が人殺しに使われ、一機も帰って来ないというのは苦しい事だと思います。そして、二郎が愛する妻菜穂子を亡くした事は間違いなく苦しみ、悲しみのどん底だと思います。それから「生きねば」という言葉については、二郎が夢で、死んだ菜穂子から「生きて」と言われ、結核で苦しみ早世した菜穂子の分も「生きねば」という事だと思います。
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柔肌のお世話にならぬは・・・
さちほ
まだこれから見るところですが…「主人公を取り巻く女性達が凛として」理数系の女性はなぜかしっかり者というイメージがあります。理性的とか、筋道を通す...
まだこれから見るところですが…
「主人公を取り巻く女性達が凛として」
理数系の女性はなぜかしっかり者というイメージがあります。理性的とか、筋道を通すとか。
大学の同級にまさにその通りの女性がいました。無駄がない、しっかり者、理詰めで物を言う、考えを曲げない、、、クラスではサッチャーと呼ばれていた。
今50をだいぶ越えたが、まだ独り者。しかも独居。山口氏が仰る「女性は美しいところだけでなく、ちょっと「隙」を見せてくれた方がかわいい」にぴったりです。
サッチャーに恋い焦がれたクラスメイト、猛烈なアタックにもこころ動かさず、20年経ってついに諦めた。彼が言うには恋心って鋼鉄の中にちょっとした「ヒビ」があってそこに食い込まれると、鋼鉄も真っ赤に燃え盛る火の玉になる。
サッチャーは1度も火の玉になったことが無い。女性版「柔肌の 熱き血潮に 触れもみで さびしからずや ・・・」
人として生まれたからには、柔肌のお世話にならぬは、生きている価値がない…ちょっと言い過ぎ。
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コメントへの返事
山口博弥(読売新聞)
ハルとツーさま 映画からは、少しでもいとしい人のそばにいたい、という気持ちが、本当にひしひしと伝わってきましたよ。 そして、とても切ない気持ちに...
ハルとツーさま
映画からは、少しでもいとしい人のそばにいたい、という気持ちが、本当にひしひしと伝わってきましたよ。
そして、とても切ない気持ちになります。
この映画、女性の多くは恋愛映画として見るのではないでしょうか。
サリーさま
おっしゃる通り、菜穂子も、妹の加代も、凜(りん)としてすてきです。
「自分の美しいところだけを愛している人に見せたくて」
女性の永遠の願望なのですね。
でも、男性の視点から言わせていただくと、女性は美しいところだけでなく、ちょっと「隙」を見せてくれた方がかわいい、という面もありますよ。
本当に好きなら、たとえ彼女が病気でやつれたとしても、ありのままでいてほしい、と思うのではないでしょうか。
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