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通信サービス苦情急増 誤解招く表現で勧誘
インターネット回線やスマートフォンなど、電気通信サービスの契約トラブルが増えている。業者の不十分な説明や、うそや誤解を招く表現で契約を結ばされる悪質な例が目立ち、法規制を求める声もある。
静岡県の60代女性は今年2月、聞いたことのない業者から「プロバイダーを変更すると、料金が安くなる」などと電話を受けた。変更作業は遠隔操作で行うと言われ、指示されるままにパソコンを操作。接続したホームページに記載されていたID番号を伝えると、まもなく作業が終わった。
しかし、後日、業者から届いた書面をみると、プロバイダーの変更だけでなく、映像配信や困りごと相談などのオプションサービスも契約したことになっていた。「頼んだ覚えのないサービスを加えられ、月々の利用料金も今までより高くなった」と、地元の消費生活センターに相談を寄せた。
国民生活センターによると、「携帯電話・スマートフォン」、光回線やプロバイダー契約などの「インターネット接続回線」、無線でインターネットにつなぐ「モバイルデータ通信」といった電気通信サービスの相談は、2012年度全国で約4万2800件。集計を始めた09年度以来右肩上がりだ=グラフ参照=。
目立つのは、「説明通りに料金が安くならない」「解約を申し出たら、高額な違約金を請求された」など業者の説明不足や解約に関するもの。
悪質な例も少なくない。遠隔操作によるもののほか、インターネットをしない高齢者に光回線を契約させたり、「今まで使っていた回線が使えなくなる」「スマートフォンには無線LANルーターが必須」とうそを言ったりする。
同センター相談情報部の小林真寿美さんは「サービス内容や料金システムは、どんどん複雑になり、理解が難しい。販売競争が過熱し、特に訪問や電話による勧誘で悪質な手口が多い」と分析。
また、電気通信サービス契約は特定商取引法の適用がない。クーリングオフ(無条件解約)ができず、書面交付のない口頭のやりとりだけでも契約が成立してしまい、トラブルの解決を困難にしているという。
サービス提供事業者などでつくる「電気通信サービス向上推進協議会」は昨年、一度勧誘を断った人への再勧誘の禁止や、説明事項を記した書面を原則交付することなどを盛り込んだ営業活動の自主基準を策定。ただ「対応は求められるが、強制はできない」(同協議会事務局)のが実情。国民生活センターのまとめでは、今年度も6月末現在で、昨年同期比900件増の7858件の相談が寄せられており、効果は上がっていない。
総務省の情報通信技術サービスに関する研究会は今月2日、今後の消費者保護策を示した報告書をまとめた。電気通信事業法に基づく新たな消費者保護規定を設けることの検討、販売店の指導の徹底など、計11項目を示している。
内閣府消費者委員会の委員で、弁護士の山口広さんは「事業者の自主的対応では防ぎきれず、研究会が示した方向性は支持できる。行政は、クーリングオフ導入などの法規制に早急に着手すべきだ」と話している。
「お得」の多くは条件付き 必要性の判断、慎重に
通信サービス契約のトラブルは、事業者側に多くの問題があるが、消費者にも注意すべき点がある。
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の木村嘉子さんは「お得に見える誘い文句には、多くの場合、条件が付いていることを、まず知ってほしい」と話す。
昨年まで7年間、東京都の消費生活総合センターで情報通信分野を担当。数多くの相談を受けてきたが、「実質無料」「(通信速度が)速い、(料金が)安い」といった広告や誘い文句に安易に飛びついた結果、後で「期待していたサービスと違う」という状況に陥る例が代表的だ。
「無料」は、一定期間契約しなければならなかったり、「速い」は、常に一定速度を保証しているわけではなかったりする。「こうした条件は、パンフレットや説明書などには記載されている。疑問点は事業者に説明を求めた上で契約してほしい」と呼びかける。
それでも契約やサービス内容への不満を感じたら、できるだけ早く業者や最寄りの消費生活センターに相談する。「回線工事に着手していないなどの条件次第で解約に応じるところもある」と話す。
総合情報サイト「オールアバウト」のパソコンガイド、内川功一朗さんは、「あらかじめサービスの特性を理解し、自分に必要なサービスかどうかを判断できるようにしておくことが、販売員のセールストークに惑わされないコツ」と話す=表参照=。
新しいサービスを導入したり変更したりすれば、使いこなすための学習が必要で設定変更などの手間もかかる。「現状のサービス内容や料金に大きな不満を感じていないなら、慎重に検討した方がよいでしょう」(斎藤圭史)
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