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認知症 明日へ

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[グループホーム]在宅支える「介護の拠点」に

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デイサービスや相談窓口

「こいて」のスタッフと、スーパーで、お昼のおかずの買い物をする女性(左)。自宅に戻った後も、グループホームを利用している(新潟県燕市で)

 グループホームは、入居者に専門的な認知症ケアを提供するのが役割だ。

 だが、自宅にいる認知症の人にデイサービスやショートステイのサービスを提供したり、介護している家族の相談窓口になったりするなど、“認知症介護の拠点”となるホームも増えている。

 「やっぱり、うちが最高。何でも自由にできる」

 新潟県弥彦村に住む女性(78)が、うれしそうに話す。

 昨年4月下旬、村内にある「グループホームこいて」を退去し、自宅に戻った。「こいて」に入る前は、デイサービスやヘルパーを利用しながら一人暮らしを続けていたが、鍋を火にかけたのを忘れて焦がすことなどが続いた。近隣の市に住む長女(55)が一人暮らしは無理だと判断し、ホームへの入居を決断した。

 しかしその後、長女の息子(22)が4月に就職し、祖母の家での同居を申し出たため、女性は自宅に戻ることになったのだ。

 「こいて」のホーム長、多賀忍さんは「部屋はいつもきれいに片づけられていて、『泊まらせてもらっている』という感じだった」と振り返る。

 家に戻った後も、女性は週3回、デイサービスで「こいて」に通い、残る平日2日は、別の施設のデイサービスに通う。「友達もいるし、デイに行くのが何より楽しみ」と女性は言う。

 長女は「こいてのサービスに不満はなかったが、やはり、家にいるより体を動かすことが減るのが気になった。デイを使いながらできるだけ家で暮らし、いよいよ無理となったらまたホームを利用したい」と話す。

 グループホームが提供するサービスは、かつては入居だけだったが、2006年の介護保険制度改正で、1日最大3人までのデイサービスや、空室がある場合はショートステイを行うことが認められた。グループホームが支援する対象を、在宅の認知症高齢者やその家族にも広げるのが狙いだ。

 「こいて」を退去した女性のように、退去して自宅に戻った人や、入居を待つ人がデイやショートステイを使うことで、在宅生活を続けられる例も出ている。ただ、これらのサービスを導入しているホームは、運営の難しさなどから1割前後にとどまっている。

 「こいて」を運営する社会福祉法人「桜井の里福祉会」常務理事の佐々木勝則さんは「認知症の人は、急激に増えている。グループホームは、認知症介護のプロとして、入居者の重度化などへの対応と同時に、在宅で暮らす人への支援なども行っていくべきだ」と強調する。

 認知症に関する地域の相談窓口になっているグループホームもある。

 大阪府箕面市にある「こまち」など二つのグループホームを運営するNPO法人「ヒューマン・ワークス」には、認知症の人の家族などからの相談が、年200件ほど寄せられる。

 理事長の中垣内(なかがいち)吉信さんは、2005年から「市民後見人」として活動しており、自治体などから紹介されて相談してくる人も多いという。

 内容は、入居させたいというものが一番多いが、「どう介護していいのかわからない」という家族からの相談も少なくない。

 「アルツハイマー型認知症」と診断されたある男性は、1日3時間以上も歩き回っていた。介護に悩んだ家族から相談を受けた中垣内さんは、自分の行動を抑制できなくなる「前頭側頭型認知症」を疑い、専門医の診察を受けるようアドバイス。男性は、やはり前頭側頭型認知症と診断され、薬の処方を受けて、長時間歩き回ることはなくなった。

 中垣内さんは「介護の相談窓口はたくさんあるが、サービスを紹介するだけのところが多い。認知症介護に専門的な知識を持つグループホームが、相談機能を担っていくことが必要だ」と話している。(針原陽子、写真も)

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