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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

風疹蔓延は疑いもなく緊急事態

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夏色のワンピースでお出かけする娘

 7月になり娘は1歳6か月になりました。週末に以前一緒に働いていた女医4人と子ども6人で温泉に行き、娘はプールやボールプールではしゃぎまくってとてもご機嫌でした。帰って来たら疲れたのかすごく早い時間に寝付いてしまい、これは仕事を片付けるチャンスだと思ったのですが、私も疲れがたまっていて一緒に寝てしまいました。

 昨年から流行している風疹については、以前の「風疹の対策をしていますか?」という記事でも取り上げましたが、その後抜本的な対策が取られていないため、当然のことながら感染者の数は分かっているだけでもうなぎ上りに増えています。自治体によっては風疹ワクチンやMRワクチン(麻疹風疹ワクチン)の公費助成に踏み切ったところもありますが、妊娠を考えている女性や妊婦の夫などに限定されていることが多いです。集団の9割が抗体を持てば流行の発生を抑えることができますが、公費助成の対象があまりにも限定されているため蔓延(まんえん)を止めるには程遠いのが現状です。

 そもそも慢性的に不況のこのご時世に、予定外に起こった風疹流行に対応して潤沢に助成金を出せる自治体などそうそうある訳がありません。ここは国が動くしかないと思います。

厚生労働大臣の発言に唖然

 ところが、6月9日までに今年に入ってからの風疹感染者数が1万人を突破したにもかかわらず、田村厚生労働大臣は6月18日に、特別な対策を取るほどの事態とは考えていないと発言し、これには多くの医師が唖然としました。理化学研究所の加藤茂孝先生がWHOのデータからまとめられたところ=表=によれば、昨年の風疹感染者数は日本が世界ワースト4位、先天性風疹症候群の例数はワースト8位という先進国として大変不名誉な蔓延となっています。

 カナダの公衆衛生局は日本に渡航注意情報を発表する始末です。このまま対策を取らなければ風疹はますます蔓延し、先天性風疹症候群や、感染した妊婦が悩んだ末に妊娠中絶する例だけでなく、観光産業にも影響が出てくるでしょう。オリンピック招致どころでは全くありません。

どうするワクチン不足

 当然のごとくワクチンが底をついてきて、メーカーから次にいつ納入できるか分かりませんと言われている医療機関も続出しています。そして、足りなくなると聞くと慌てて打ちにくる人がたくさん現れるのも世の常です。今、医療機関では説明に時間を割かれ、診療がスムーズに行われなくなっているところもあるようです。

 突然国内のメーカーに増産しろと言っても無理なので、MMRワクチン(麻疹風疹おたふくかぜのワクチン)を輸入するしかありません。すでに医師の裁量で個人輸入されていますが、国内で未承認のワクチンであるため、助成は受けられず、万が一副作用が生じた場合に補償制度も使えず、接種する医師と接種される人に自己負担と自己責任がのしかかってしまいます。今こそ国が費用を負担してMMRワクチンを緊急承認し、抗体保有率の低い年代などに集団接種をするべきだと思います。

 田村厚生労働大臣には、まずは事態を直視し、しっかり財務省と戦って予算を勝ち取っていただきたいです。でなければ後世に汚名が残ってしまうと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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5件 のコメント

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MMRワクチンの緊急輸入しかないでしょう

産婦人科医

風疹の流行で、産科外来での時間をとられるようになりましたが、MRワクチンの不足で、さらに面倒な説明をしなくてはいけなくなりました。流行を止めるた...

風疹の流行で、産科外来での時間をとられるようになりましたが、MRワクチンの不足で、さらに面倒な説明をしなくてはいけなくなりました。流行を止めるためにはワクチンの緊急接種が必要というのは、多くの国で実践され結果が出ているものなのに、どうして日本でできないのでしょうか?
ワクチンを打てない人、ワクチンを打っても免疫のつかない人のためにも、すべての人がワクチンを打って、風疹という病気自体をなくすしかないのがわかっているのに

有志の医師がMMRワクチンを輸入してくれています。もし余ったら、損をしてしまうことを覚悟の上で動いてくれています。頭が下がります。輸入してくれたMMRワクチンを無駄にしないためにも、どんどん打ちに行きましょう。輸入ワクチンは「子供の文がなくなったら困るから」なんて考えなくても良いのです。海外には十分にあります。

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いまさらワクチン不足なんて言うものでは

hatch

先日の厚労省の「抗体を調べてから接種」の通知にはあきれました。昨年から流行しているのに、その言い訳が「増産には時間がかかるから」とは、どれほど無...

先日の厚労省の「抗体を調べてから接種」の通知にはあきれました。
昨年から流行しているのに、その言い訳が「増産には時間がかかるから」とは、どれほど無責任なのでしょう。

3年育休や女性手帳以前に、子供の防疫体制も整えないとは嘆かわしい。
こんな国で安心して子供が生めるものですか。

少子化対策がどうの言っていますが、所詮、日本政府の頭の中は「女子供のことはどうでもよい」事なのでしょう。

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ワクチン接種したけれど

ミツキママ

いつも楽しみに拝読しています。娘は幼児の頃にMR、昨年2月、高校3年生で風疹ワクチンを接種しました。しかし5月、大学の抗体検査で「抗体がない」と...

いつも楽しみに拝読しています。
娘は幼児の頃にMR、昨年2月、高校3年生で風疹ワクチンを接種しました。しかし5月、大学の抗体検査で「抗体がない」との診断。でも2回摂取している人はさらに予防接種はしなくて良いとの通知が来ました。予防接種をしても抗体ができないことがあるのですか? また、このままで感染する危険はないのでしょうか。不安な気持ちです。

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