文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いきいき快適生活

介護・シニア

「仕事」ができる高齢者向け住宅…役割や報酬 生きがいに

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

「要介護」多く、取り組み少数

「体が動く限り仕事をしたい」と、そばを打つ小泉さん(右)。そばは、篠崎さん(左)らスタッフにも好評のメニューだ(栃木県那須町の「ゆいま~る那須」で)

 高齢者向けの賃貸住宅「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の整備が進むなか、入居者の生活に「仕事」を取り入れる試みが注目されている。

 本格的な就労ではないが、自分に合った役割や報酬を得ることで、充実感や生きがいにつながっているようだ。

 栃木県那須町のサ高住「ゆいま~る那須」では、60~89歳の45人が暮らしている。厨房(ちゅうぼう)で、入居者の小泉実さん(76)が慣れた手つきでそばを打っていた。「いくつになっても仕事ができるのは、いいね」と笑う。

 群馬県内で30年以上、そば店を経営していた。妻(67)が脳梗塞で倒れたために店を閉め、2010年に夫婦で入居。スタッフの勧めでそばを打ってみたところ好評で、12年から食堂の昼用メニューに採用された。週2回、要介護3の妻がデイサービスに行っている間、台所に立つ。

 売り上げから材料費などを引いた残りが小泉さんの収入で、月約1万5000円。「気分転換になるし、『おいしい』と言ってもらえるのが一番うれしい」。食堂では他に2人が、調理の仕事をしている。

 入居者が〈働ける〉仕組みは他にもある。車での送迎や買い物の同行など、各自が「できること」を希望者に提供すると、食券として使えるハウス内通貨がもらえるのだ。理容師だった正木敏子さん(71)はヘアカットをしている。「引退したつもりだったけれど、人のお役に立てて幸せ」と話す。

 ハウス長の篠崎美砂子さん(62)は「入居者はサービスを受ける側になりがちだが、仕事や役割を持つことで、張り合いのある暮らしをしてもらいたい」と狙いを説明する。

 11年10月から登録が始まったサ高住は現在、全国に約3500か所(約11万3000戸)あるが、こうした取り組みはまだ少数派だ。

 高齢者住宅財団が昨年、サ高住約1150か所を対象に行った調査では、入居者の70・7%が80歳以上で、全体の66・7%が要介護1~5の認定を受けていた。「自立」は12・8%にとどまり、要介護者向けの住まいとなっている実態が浮き彫りになった。

 入居相談に応じる高齢者住宅情報センター(大阪事務所)によると、元気なうちに住み替えを考えるシニアは増えているが、就労や社会参加の意欲が高い人も多く、希望する住宅が見つからないケースが目立つ。

 今年1月、千葉県佐倉市にオープンした「プチモンドさくら」も、仕事ができるサ高住だ。入居者の男性(75)は週5日程度、住宅内の共用部の清掃などをし、月約5万円の収入を得ている。働きながら暮らせるサ高住を探して入ったといい、「独り身なので見守りなどがある住宅は安心。でも、健康なうちは働いた方が気持ちがいい」と話す。

 同住宅は今後、地域にも開放している住宅内のカフェなどでの仕事を、入居者に紹介することも検討している。

 高齢者の住まいに詳しい長谷工総合研究所の吉村直子上席主任研究員は「長寿化で元気な高齢者が増えたが、サ高住は介護対応に偏っている。施設とは異なる多様な住まい方を提案し、高齢者の住み替えの選択肢を増やしてほしい」と話している。(古岡三枝子)

 サービス付き高齢者向け住宅 高齢者住まい法に基づくバリアフリー構造の集合住宅。60歳以上の人が入居でき、部屋の広さは25平方メートル(十分な広さの共用の居間や食堂などがあれば18平方メートル)以上。安否確認と生活相談サービスの提供が義務づけられている。通常、毎月の家賃とサービス費などが必要。国は整備促進のため事業者に建設費の一部を補助している。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

いきいき快適生活の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事