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認知症を考える

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(3)患者460万人以上 推計の1.5倍

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 我が国の認知症の患者さんの数が460万人を超えるという、衝撃的な調査結果が報道されました。これは、従来の推計のおよそ1・5倍に相当します。

 昨年9月、厚生労働省は、今後5年間の認知症対策の方針を示す「オレンジプラン」を発表しました。従来の推計に基づいたこのプランによると、2017年には、認知症患者さんの半数が在宅介護を受けると予測。残る半数が、特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護施設、介護型の有料老人ホームなどの居住系サービス、医療機関で介護を受けているとしています。これは、現在の介護状況とほぼ同じ割合です。

 一方、精神科病院に入院している患者数は、1996年の2万8000人から2008年には5万2000人と、1・9倍に増加しています。同じ時期に、認知症の有病率が増える75歳以上人口も1・8倍に、特養の定員数も同じ増え方をしています。

 認知症患者さんの15%強が特養に、2%程度が精神病床に、という状況は現在に至るまで大きく変わっていません。

 最も需要がある特養は、現時点でも数十万人という待機者がいます。従来の推計で認知症患者が約1・2倍になるとされる17年時点でも、特養は10万人分しか増えません。さらに、最初に触れた推計に従えば、待機者は一層ふくらみ、待機期間も長くなるでしょう。

 独居高齢者や老老介護が増えている現状を見れば、きちんとした有料老人ホームや特養などに入れない人は、無理な在宅生活を続けるか、劣悪な施設に放置されることが懸念されます。

 認知症に関する正確な認識も、社会情勢の変化に対する洞察もない政策は、絵に描いた餅に過ぎません。現実を見据えた対応が必要だと思っています。(斎藤正彦、都立松沢病院院長)

 

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