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医療・介護の不足 深刻化
都市部の高齢化を考える国の検討会が始まったそうですね。何が問題なのですか。
急増する都市部の高齢者
日本が今後、直面するのは、都市部の高齢者の爆発的な増加だ。厚生労働省が5月に初会合を開いた検討会では、急増する都市で暮らす高齢者の生活をどう支えるかが大きなテーマになっている。
国立社会保障・人口問題研究所が3月に公表した「日本の地域別将来推計人口」によると、2040年の日本の人口は、今より約2000万人少ない約1億700万人。65歳以上の人の割合を示す高齢化率は、24・1%(12年)から、40年には36・1%にまで上昇する。
40年の時点で高齢化率が高い都道府県は、43・8%の秋田のほか、青森、高知など、地方が上位を占める。東京、埼玉、神奈川などの都市部は全国平均よりも低い。
高齢化率を見ると、問題は地方で深刻に見える。だが、高齢者の増加数を見ると、別の課題が浮かび上がってくる。
秋田は、今後30年で高齢者が1万5000人減る。地方では秋田と同様、高齢者が減るか、頭打ちになる傾向がある。逆に、都市部は、東京で144万人、神奈川で109万人、埼玉で73万人と、大幅に増加する。高度成長期以降に職を求めて地方から都会に出た人たちが高齢期を迎えるためだ。医療や介護の必要性が高くなる75歳以上の増加割合も都市部が大きくなる。
政策を考える際は、こうした地域の特性に着目する必要がある。人口減少が進む地方では、今後、過疎地の生活をどう支えていくかが大きな課題になる。
一方、都市部では、医療や介護サービスの不足に直面する。地価が高く、用地確保が難しいことから、現在でも待機者が多い介護施設の不足がさらに深刻になる。在宅介護の充実のほか、独居高齢者の見守りなど、生活を支える体制作りも大きな課題になる。
厚労省の検討会は、商店街や企業、ボランティアなどを活用した日常生活の支援、在宅介護サービスの拡充、都市部の要介護高齢者を地方の施設で受け入れることの是非などについて議論し、今秋に報告書を取りまとめる予定だ。
住み慣れた地域で暮らし続けたいと願う人は多い。地域の将来像をしっかり見据えた上で、特徴に合わせた支援策を作る必要がある。(小山孝)
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