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利益相反…産学連携が生んだゆがみ

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 高血圧治療薬の臨床研究を巡って、利益相反問題が医学界を揺るがしています。

 利益相反は、英語で「Conflict of Interest」と言い、利害の衝突を意味します。米国では、産学連携が盛んになった1990年代の終わりから、様々な問題が報告されるようになりました。たとえば、こんなケースです。

 大学の研究者が、薬の効果や副作用を調べる研究を行うとします。研究が公平、公正に行われるべきなのは言うまでもありません。

 ところが、この研究者が、この薬の会社の株を持っていたとしたらどうでしょうか。薬が売れて会社がもうかれば、研究者自身が利益を得ることになります。

 つまり、研究を公平に行うべき立場と、薬が売れた方が良い立場の、利害の衝突が生じるわけです。

 ある種の薬の研究では、薬を肯定的に評価する研究者の96%が企業から資金を得ており、否定的な立場の研究者の37%に比べ多かったとの報告もあります。

 また、実際に結果がゆがめられることがなかったとしても、全く問題がないわけではありません。世間から疑いの目で見られること自体が、研究への信頼低下につながるからです。金銭関係があることを積極的に公表せず、後から発覚した場合などは、なおさら疑念を生じさせます。

 画期的な新薬開発など、大学と企業の連携の重要さは増すばかりです。医学研究への信頼性を損なわないような、透明化の取り組みが求められています。

 医療のニュースに登場する言葉を分かりやすく解説します。(田村良彦)

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