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認知症 明日へ

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[グループホーム]進む重度化 対応に限界も

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設備不足、医療のプロ不在…

グループホーム「ぬくみ」の昼食時。自分で食べられる人でも、声かけなどは必要になってきた(東京都新宿区で)

 「認知症介護の切り札」と呼ばれ、2000年の介護保険制度スタート後、急速に普及した認知症グループホーム。

 当初、利用対象者は軽度から中等度の「元気な認知症」の人だったが、月日とともに重度化が進んでいる。対応を迫られるグループホームの現状をみた。

 東京都新宿区にあるグループホーム「ぬくみ」は、向かい合って立つ「くるみ」とともに、2001年、区内初のグループホームとしてオープンした。定員は9人だが、今は8人が暮らす。

 2階建てのぬくみにエレベーターはなく、上階に住む4人のうち2人は、スタッフが抱えるようにして階段を下りる。介助なしで歩けるのは1人だけだ。

 昼食時のぬくみ。全面的な食事介助が必要なのは3人だが、自分で食事を取れる2人を除き、あとの人は見守りや声かけなどが要る。スタッフが数人ずつ介助し、全員が食事を終えるのに2時間以上かかることも珍しくない。利用者の平均年齢は約89歳。平均要介護度は3・7(最も重いのは5)だ。

 「ここ数年で身体的なレベルが一気に低下した。外出支援なども心がけていますが、今は食事、排せつ、入浴などの基本的なことだけで一日の大半が過ぎてしまいます」。ぬくみ主任の依田佳代子さんは話す。

 グループホームは当初、記憶障害などはあるが、身体は元気な人が利用するとされた。家庭的な環境の中でなじみのスタッフのサポートを受けて生活することで、症状の進行を穏やかにする狙いがある。

 ぬくみでも、5年ほど前までは、元気な認知症の人の介護が主だった。例えば高林叶子(かのこ)さん(90)は、冷蔵庫から食べ物を勝手に出して食べてしまう、2階の自室の窓から下に物を落とす、隣の部屋の人の服を持ち出して自分の名前を書く、といった行動があった。

 スタッフは、足が丈夫で手先が器用な高林さんに、食料の買い出しを担当してもらったり、手芸の腕を生かしてカーテンを作ってもらったりと得意なことを頼むようにした。高林さんは生き生きと過ごし、問題となるような行動は減っていった。

 その高林さんも、数年前から言葉が出なくなり、歩くこともできなくなった。

 高林さんの次女、岡美知子さん(62)は「母が穏やかに過ごせるのは、なじんだ利用者やスタッフがいるから。できれば最期までここで過ごさせたい」と語る。

 ぬくみではこれまで、老衰やがんなどの利用者4人を、訪問看護師や往診医などの協力を得ながら看取(みと)ってきた。だが、どの状態まで受け入れられるかはケース・バイ・ケースだという。

 運営する社会福祉法人の西村美智代理事長は「ホームは狭く、重度化に対応する設備もない。スタッフの数が少なく、医療のプロも中にはいない。最期までみたいという気持ちはあっても、限界があることを忘れてはいけない」と話す。

 重度化は、開設から年数がたったグループホームの多くが直面する課題だ。

 日本認知症グループホーム協会が昨年行った調査によると、入居時には、7割の人が「要介護2」以下だったが、調査時点では約5割に減少。「要介護1」の人が大きく減り、その分、「要介護3」以上の人が増えた。10、11年度にグループホームから退去した状況をみると、40%が医療機関への入院で、死亡退去は24%。死亡者の約半数はホーム内で看取っていた。

 グループホームの運営に詳しい上智大学総合人間科学部の藤井賢一郎准教授は「認知症の人は、場所を移されることによるダメージが大きい。住み慣れた場所でできるだけ長く暮らせることが重要だ。重度化への対応が必要で、対応できているホームは制度上も評価すべきだ」と指摘している。

 メモ 認知症グループホームは、北欧での実践を学んだ人たちが1990年代に独自に取り組んだのが始まり。介護保険サービスとなったことで急増、99年度末の約260か所が、今では1万か所を超える。

 利用者の重度化を受け、国は06年度に訪問看護ステーションとの連携などを要件にした「医療連携体制加算」を新設。09年度からは「看取り介護加算」を設けた。(針原陽子、写真も)

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