文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

yomiDr.記事アーカイブ

胸の苦しみ 心臓からか、不安からか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 「胸が苦しいんです」とおっしゃる38歳の主婦Jさん。突然、心臓の鼓動がドキドキと早くなったり、脈が飛んだりする症状で、以前から悩んでいたJさんは、家事やリビングでくつろいでいるときなど、1日のうち何度か脈のリズムが乱れると訴えます。

 「どこかの病院で心臓の検査を受けましたか」とたずねたところ、「心臓の専門医や大学病院の循環器科で詳しく調べてもらったのですが、原因不明でした」とのことでした。日常生活をしながら24時間連続して心電図を記録する検査でも、不整脈はあるものの大きな問題はないと診断されたそうです。しかし、Jさん自身は、「ドキドキ」が何の前兆もなく襲ってくるため、いつも恐怖におびえていました。

 わたしがJさんを診察したときは、すでに他の漢方専門医から「炙甘草湯(しゃかんぞうとう)」という「動悸」の治療目的で処方され、内服していました。

 この「炙甘草湯」という漢方薬は、「体力がおとろえて、疲れやすいものの動悸、息切れ」に用いられる不整脈の特効薬です。これまでにわたしも不整脈を訴える患者さんに処方させていただき、よい結果を得た経験がありましたので、しばらく、内服を続けていただきました。

苦しみの原因は?

 しかし、1か月経っても、2か月経っても、Jさんの「ドキドキ」は良くなりません。「先生、わたしの胸の苦しみ、治らないんでしょうか?」と、Jさんの不安は増すばかりでした。

 治療が思うようにいかないわたしは、Jさんに、どんなときに症状が出るのか、なにか関係することはないのか、もっとくわしく、何度も聞くようになりました。しかし、どんなに聞いてもこれといった前兆やきっかけを見つけることができませんでした。

 思い悩んだわたしは、あらためてくわしい心臓の検査を受けていただきました。確かに不整脈が認められましたが、やはり命に関わるようなタイプではありませんでした。心臓の専門医や大学病院の循環器科の医師が診断したように、薬による治療の必要がないことを、Jさんによく説明しました。

 その上で、漢方薬を不整脈の「炙甘草湯」から、不安を取り除く効果がある「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」へ変えることにしました。「ドキドキ」の原因は不整脈ではなく、心に付きまとう「不安」かもしれないと考えたのです。

「ドキドキ」はゆっくり消えていった

 その後も、しばらくは「ドキドキ」は何度かJさんを苦しめました。ところが今年2月、「先生、最近、ドキドキ、感じなくなりました」「日常生活で不整脈のことを忘れていることが多くなりました」と、おっしゃるようになったのです。長い間、Jさんを苦しめてきた「ドキドキ」が徐々に消えていったのです。

 そして、4月になりました。Jさんからは、「不思議なんですが、日常生活では『ドキドキ』があったことすら忘れています」という言葉をいただきました。わたしも飛び上がるほど嬉しくなりました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

いまづ医師の漢方ブログ_顔120

今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

いのちに優しく いまづ医師漢方ブログの一覧を見る

5件 のコメント

胸痛 原因は?

まゆっち

47歳、中肉中背の男性です。血圧も高くありません。朝方、胸が重苦しくなり20分くらい続きます。冷や汗をかき、動けません。治れば、普通の生活が出来...

47歳、中肉中背の男性です。血圧も高くありません。
朝方、胸が重苦しくなり20分くらい続きます。
冷や汗をかき、動けません。
治れば、普通の生活が出来ます。
24時間心電図、カテーテルでも異常ありませんでした。整形外科でのレントゲンでも異常ありませんでしたが、ここ1ヶ月くらいは週1度くらいのペースで胸痛があります。
原因が分からず、何科を受診したら良いかも分かりません。

つづきを読む

違反報告

不安は病気か?

寺田次郎

話と診察をして、するべき検査をして、最終的に症状が取れたのであれば、それでいいんじゃないですか?38歳の主婦であれば、夫やその仕事との関係、子供...

話と診察をして、するべき検査をして、最終的に症状が取れたのであれば、それでいいんじゃないですか?


38歳の主婦であれば、夫やその仕事との関係、子供の関係、親の老化の問題など色々表になりだす年齢です。
その中で、不安や不満は発生しますし(それらを自覚し、言葉にできる時もあればできないときもあります。)、睡眠不足や飲酒などが重なって種々の症状が発生することはあり得ます。

それらの不安や生活の乱れはいつも直ちに修正されるべき「病気」なのでしょうか?
(病的なものとそうでないものがあると思います)

たちどころに直した「名医」エピソードもいいですけど、こういう素直なエピソードもいいです。

個人的には、先生が何度もゆっくりお話を聞いたことで不安が取れたんじゃないかと思います。

つづきを読む

違反報告

身体表現性障害・不安障害

総合医

まず、器質的疾患の診断のために24時間ホルタ―心電図などの検査は当然です。それで異常が見つかれば、その治療が必要です。そのような検査をしても何ら...

まず、器質的疾患の診断のために24時間ホルタ―心電図などの検査は当然です。それで異常が見つかれば、その治療が必要です。
そのような検査をしても何ら医学的異常は見つからない、あるいはあっても軽微であるのに、説明不可能な身体症状が続き、医師の「異常ありません」という言葉では納得できず、患者さんは不安を募らせる。見落としではないのか、名医だったらわかる病気ではないのか、と、何度も繰り返して、あるいは「最新の」検査を求めて、ドクターショッピングしてしまう。
このような場合、カウンセリングだけで納得する方もありますが、多くの場合、「気にならなくなる」ように「抗不安作用」「自律神経調整作用」のある薬剤が必要な方も多いです。
漢方薬でなくても、成分が明らかな有効薬は西洋医学にも数多くあります。しかも、漢方薬よりエビデンスがしっかりあり、安価であることが多いです。
身体表現性障害や不安障害を診ることのできる総合診療医・総合医や心療内科医・精神科医にご相談ください。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

最新記事