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はつらつ健康指南

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供養は近くで、手元で

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遺骨移転、一部を保管

遺骨を納めた箱は墓石中央部の銘板の後ろにある。お参りする際、銘板と箱が自動的に運ばれ墓石にセットされる(東京の「伝燈院 赤坂浄苑」で)

 故人の埋葬に対する考え方が変わってきた。地方のお墓から交通の便がよい都心の納骨堂に遺骨を移したり、遺骨の一部をしゃれたデザインの容器に入れて手元に残したり。供養に対する意識の多様化や大都市部での墓地不足が影響しているようだ。(赤池泰斗)

 東京都練馬区の六郷優子さん(66)は、栃木県内の霊園にあった両親の墓を東京都港区の最新式の納骨堂に移した。「栃木県内のお墓は見晴らしが良く、父が生前に気に入って決めたのですが、年を取って通うのが大変になってきた。今は、外出時、気軽にお参りでき、心配事が一つ減った」

 この納骨堂は、今年4月に完成した「伝燈院(でんとういん) 赤坂浄苑」。東京メトロ赤坂見附駅から徒歩2分の場所にある。5階建てビルの2、3階に計12の墓参り用のスペースが並ぶ。各スペース横の読み取り機にカードをかざすと、1分ほどで扉が開き、高さ165センチ、幅65・5センチの墓石が現れる。「○○家」と刻まれた銘板の裏側に、骨つぼを納める箱がある。立体駐車場に似た仕組みで銘板と箱を移動させ、墓石の中央部にセットし、「搬送式納骨堂」と呼ばれる。永代使用料は150万円で年間管理料が1万8000円。

 同苑の販売や管理を担当する仏壇・霊園会社「はせがわ」(東京)の渕上岩義さんは「都心の狭い敷地でも多数の遺骨を納めることができ、お参りのスペースをゆったり取れるのが搬送式の特長です」と説明する。

 墓参できないという悩みをインターネットを活用して解消しようという試みもある。

 東京都豊島区の寺院、功徳院の「サイバー飛天」は、境内の合葬墓「飛天の塚」に納骨。その後、寺院に行かなくても、パソコンにIDとパスワードを打ち込めば「墓誌」にあたる故人の写真や戒名などが画面に表示され、いつでもどこでも墓参りができる。

 納骨費用、永代使用料などを含む費用は50万円。2009年の開設当初はもの珍しさだけで実際に申し込む人は少なかったが、現在は243人が申し込んでいるという。

 遺骨の一部を家の中に安置したり、ペンダントなどに入れたりする「手元供養」を利用する人も増えている。

 東京都町田市の中尾貞子さん(83)は、13年前に亡くなった夫の遺骨の一部を、茶器の「(なつめ)」に入れ仏壇に置いている。夫の希望で海に散骨したが、「全部流す気になれなかった」という。墓石の代わりに木を植える市内の樹木葬墓を申し込んだが、納骨はしていない。「自分が死んだら、夫の遺骨と一緒に納めてもらうつもりです」

 葬送事情に詳しい東洋大学ライフデザイン学部教授の井上治代さんが06年に手元供養品の購入者約300人に行った調査によると、手元供養をする理由として「仏壇や位牌(いはい)より身近」を挙げた人が59人と最も多かった。「墓が遠くにあるので身近で供養したかった」という回答も12人で上位になった。

 井上さんは「核家族化が進み、先祖代々の墓を引き継いでいくという考え方に息苦しさを感じる人が増えている。しかし、故人を身近に感じていたいという思いが弱まったわけではない。利便性を重視したり、手元供養を利用したりするのは、そんな理由からではないか」と話している。

墓地不足続く都市部、合葬墓や樹木葬 活用も

 大都市を中心に、墓が不足するケースが目立つ。

 東京都の試算によると、都内の2008年の墓地需要は約2万基。これが徐々に増え続け、28年には約3万基になると推計する。これに対し、08年に都内で供給された墓所は約6000基と推計され、多くの人が都外に墓を求めたり、自宅に遺骨を置いていたりしているとみられる。

 昨年の都立霊園の一般墓地の平均応募倍率は7・5倍。合葬墓は同2・9倍、初めて募集した樹木葬の墓は同16・3倍にもなった。大阪市立霊園でも、交通の便のいい場所にある4か所の一般墓地には問い合わせが相次ぎ、満杯の状況が続いている。

 ただし、東京都内の霊園事業者によると、郊外の民間霊園には余裕のあるケースもある。「条件に見合う墓が見つからない人が増えているというのが実態です」と話す。

 東京市町村自治調査会が2010年に行った調査によると、墓地を取得する際に重視する条件で最も多かったのは「交通の利便性」で77・6%。一方、「区画の広さ」は11・5%と少なかった。自家用車を利用した場合の自宅から墓地までの希望所要時間も「30分以内」という回答が56%を占め、「広さ」より「近さ」重視の傾向がうかがえる。そのため、立地が良く、使用料や管理料も民間より安い都立霊園の人気が高くなる。

 こうした状況に、都立霊園では、管理者がいない墓地を整理して再貸し付けする「循環型」利用に力を入れている。都霊園条例は、管理料を5年間納めない場合は使用許可を取り消せると規定。この規定を活用した墓所の整理を進めており、2000年度からの13年間で計2352件の使用許可を取り消した。遺骨は無縁塚に合祀(ごうし)する。

 都の担当者は「墓所の継承者捜しなど手続きに時間はかかるが、限られた墓所を有効に使っていきたい」と話す。また、20年間骨つぼで保管した後は合祀するタイプの合葬墓を今後増やし、循環利用を計画的に進めて行く考えだ。

 全日本墓園協会主任研究員の横田睦さんによると、墓地不足が続く一方、樹木葬など新たなタイプの墓などが登場し、選択肢は広がっている。「利便性や使用料など様々な条件を吟味し、残される子どもらの意見もよく参考にして選んでほしい」と話している。

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