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深化する医療

病態理解 患者に寄り添う

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 脳梗塞になった患者にとって急性期の治療と同じくらい重要なのが、入院後のケアだ。ケアがうまくいけば、後遺症を残さずに社会復帰できる可能性も広がる。国立循環器病研究センター(国循、大阪府吹田市)では、日本看護協会の「脳卒中リハビリテーション看護認定看護師」の認定を受けた副看護師長、山口理恵子(32)ら4人が入院患者に目を配っている。

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観察・判断力磨く看護師ら

患者の手の動きをチェックする認定看護師の山口理恵子さん(大阪府吹田市の国立循環器病研究センターで)=守屋由子撮影

 「誕生日を言えますか」「片手ずつ上げますよ」

 4月下旬、脳卒中患者専用の集中治療室「SCU」の一室。脳梗塞の疑いで入院した50歳代の男性患者がペンライトの光を目で追い、指を一本ずつ折り、手のひらを振った。山口は優しく声をかけながら、手や目の動きに異常はなく、まひや障害がないことを確認する。

 脳卒中後の患者には慎重な観察が必要だ。例えば、脳血管内の血栓を溶かす薬「t―PA」は、脳出血を引き起こすリスクを高める場合がある。投与後24時間までの患者は、15分~1時間ごとに血圧を測定し、出血や梗塞再発の兆候がないか評価するよう、治療指針に記されている。観察は投与直後は医師が中心で、容体が安定すると看護師が中心となる。「どんな症状が起こり得るか予測し、細かな変化も見逃してはいけない」と山口は気を引き締める。

 国循の看護師は毎月のように勉強会を開くなどし、観察力や判断力を高めるよう努めている。SCU医長の古賀政利(43)は「脳卒中を診る専門的な力が求められ、役割は大きい」と言う。

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 脳卒中は、介護が必要になる原因疾患として最も多く、失われた機能の回復や維持を図るのに、リハビリは不可欠だ。国循では平均4日間ほどしかないSCUでの入院中に関節が固まり、足腰などが弱るのを防ぐため、リハビリを始める。

 医師は入院当日にリハビリテーション科に連絡。理学療法士らは病状の許す範囲で、早ければ翌日にベッド上などで患者の訓練を始め、看護師は、日常の生活援助の中で起き上がってもらったり、手足を動かしてもらったりする。

 突然、体が不自由になった患者のショックは大きい。山口が看護した高齢男性は、脳梗塞の四肢まひで寝たきりになった。約1か月後、リハビリで山口らに支えられながら、座った姿勢を取ることができると、涙を流した。周りをSCUの看護師ほぼ全員や医師らが囲み、一緒になって成果を喜んだ。「患者さんに寄り添い、わずかな変化でも患者さんや家族と一緒に喜び合いたい」と山口は話す。

 脳血管内科部長の豊田一則(51)は「脳梗塞の治療には薬の開発だけではなく、病態をよく理解した医療スタッフが欠かせない」と強調した。(敬称略、阿部健)

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