いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ
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最先端「粒子線療法」と漢方を一緒に
日本東洋医学会学術総会のため、鹿児島に来ています。「漢方“力”“その技とサイエンス”」をテーマに、さまざまな病気に使われている漢方薬の話題が取り上げられます。がんに対する「粒子線療法」や老後の健康管理に漢方治療が活用されている話題などが取り上げられています。
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先日、同僚のご家族のがん相談を受けました。
患者さんは80歳になるおばあ様で、病気は膵臓がんでした。ご存じの方も少なくないと思いますが、膵臓がんは見つけるのが難しいだけではなく、治療も難しい病気です。
この方は、非常に発見が早く、がんの大きさが2cm以下で周囲のリンパ節への転移もありませんでした。日本膵臓癌学会の「膵癌取り扱い規約」では進行度I期の状態でした。状態にもよりますが、一般にはがんを切除する外科手術の対象になりえます。
しかし、お体の調子が悪く、主治医から手術が受けられない状態と診断されたそうです。
日本が最先端 粒子線治療とは
まずは、体調管理からはじめることにしました。この方の場合は、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を服用していただくことになりました。この漢方薬は免疫力を高める効果があり、がん診療でよく使われているものです。
ただ、漢方薬だけでは、がんは治りませんので、わたしは「粒子線療法」をお薦めしました。
「粒子線療法」とは、放射線治療のひとつです。日本が世界で最も進んでいるとされる分野のひとつで、治療施設は日本国内に十数か所あります。その中でも千葉県にある放射線医学総合研究所重粒子医科学センターでは、すでに延べ5000例以上の実績があり、多くのがん治療が行われています。
「粒子線療法」と従来の放射線治療の違う点は、放射線による正常な組織への影響が少ないことです。からだの深い部分にできたがん細胞の場合、皮膚からがん細胞までの間を放射線が通り抜ける時に、どうしても、正常な組織へダメージを与えてしまいます。しかし、「粒子線療法」ではピンポイントにがん細胞を狙うことができるため、正常な部分への影響がほとんどありません。
最先端医学と漢方治療、どちらの治療法を選ぶか、ではなく、どちらもうまく使いこなすことが大切です。
同僚のご家族は、その後、「粒子線療法」を受けることにしました。おばあ様は、現在、漢方薬を内服しながら「粒子線療法」中だそうです。頑張ってくださいね。
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日本食道学会学術集会に来て、初めて手術ロボット ダ・ヴィンチを触らせてもらいました。
15秒ほどで手になじみ、5-10㎜の輪ゴムの移動ですが、スムーズにいじれました。
(こういうのは研修医を外科に入局にさせるのに向いてるんじゃないかと思います。ガンダムのパイロット気分でした。)
現段階では腹腔鏡手術に用途限定されており、保険は前立腺癌の手術のみしか許可されてないそうですが、研究レベルではもっと広い範囲で使われているそうです。
ピンと来たのは、近い将来血管内治療にも転用されるのではないかということでした。
触覚を、画像診断やそこからの想像に依存する欠点はありますが、遠隔操作で手術時の医療被ばくをゼロに近づけることができれば、極度に被ばくを嫌う医師や産前産後の女性医師の離脱を防ぐことができます。
(つまり、参入障壁が下がる。)
その将来が近いのか遠いのか、達成不能なのかはわかりませんが、見たことのない機械とともに医療をする時代を生きているのだと感じました。
粒子線治療が存在しなかった人が、粒子線治療を想像しているようなものだと思います。
勿論、比率は減っても、開胸・開腹手術は必要ですし、そういう意味でも世代や科を超えてチーム医療を行っていく過渡期にあるのかもしれませんね。
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