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転落招く 大人の油断
ソファの上でも目を離すと…
子どもの事故の原因で目立つのが階段やベッドなどからの転落。保護者らの油断が重大な事故につながりかねない。転落防止のための対策と、万一の時の応急処置を知っておきたい。
東京都内の男性会社員(39)は4月、生後11か月の長男をソファの上に寝かしていてヒヤリとした。その場を離れ、台所で食器を洗っていると、ドスンという音。あわてて見に行くと、長男が高さ約30センチのソファの座面から落ちて泣いていた。ソファの下に座布団があり、ケガはしなかったが、「頭から床に直接落ちたらと思うとぞっとする」と話す。
東京消防庁は2011年に、日常生活の中でケガをした0~4歳の子ども7890人を救急車で医療機関に搬送した。その中で最も多かったのが転落事故で28・4%。階段やベッド、ソファ、椅子、自転車などから転落する事故が目立った。中には、自宅2階のベランダで、エアコンの室外機の上で遊んでいた2歳の男児が地上に転落して重症のケガを負う事故もあった。
「子どもの転落事故は、保護者のちょっとした心がけや対策を実施することで減らせる」と、NPO法人「子どもの危険回避研究所」(東京)所長の横矢真理さんは話す。
その対策として、〈1〉乳幼児をソファや柵のないベビーベッドに寝かせない〈2〉階段に転落防止用の柵を設け、子どもが一人で階段を使えないようにする〈3〉ベランダに、転落につながる椅子など踏み台となるものを置かない〈4〉子どもを自転車に乗せたまま駐輪し、その場を離れない――などを横矢さんは挙げる。
横矢さんは、「前日できなかったつかまり立ちが、突然できるようになるなど、子どもの成長は早い。成長段階の特徴を踏まえ、家庭に応じて対策を考えてほしい」と話す。
一方、転落事故が起きてしまった場合の応急処置を知っておくことも大切だ。
「大きなケガをして出血していたり意識がなかったりした時は、救急車をすぐに呼ぶ」。東京都墨田区の鈴木こどもクリニック院長の鈴木洋さんはそう話す。保護者などが事故を目撃していたら、どこからどのように落ち、どの部分を打ったのかを医師に説明すると、診断の役に立つという。
頭や背中、胸など、強く打ち付けた場所によって、救急車が来るまでに寝かせておく体勢も異なる=イラスト=。意識があって呼吸できているのに、体が動かないときは、脊髄を損傷している恐れがある。抱き上げたり、慌てて動かしたりしない。無理に動かして損傷を大きくしてしまうことがあるからだ。
転落直後は何事もなかったように遊んでいたのに、時間の経過とともに体調不良を訴えるケースもある。目に見えない体内を損傷している場合もあるので、事故直後は激しい遊びはやめさせ、静かに過ごさせるようにする。
鈴木さんは、「子どもの様子を注意深く見守り、いつもよりも元気がないなど、気になることがあればすぐに受診してほしい」と話している。
転落事故を防ぐための対策(鈴木さんや横矢さんの取材を基に作成)
<ベランダや窓際>
子どもの踏み台になるような物を置かない
<階段>
階段に入れないように柵を設置する
<ベビーベッド>
転落防止用の柵を使い、子どもの成長に合わせて高さを調整する
<自転車>
子どもを自転車に乗せたまま駐輪しない。ヘルメットを着用させる
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