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糖質制限 学会提言…「第二の食事療法」に理解

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 主食を控える糖質制限食について、日本糖尿病学会が一部に道を開く提言を出し、先週開かれた学術集会でも活発な議論が交わされた。

 患者の立場に立って、継続可能で安全な食事療法の選択肢が広がるよう、建設的な検証が必要だ。

 糖質制限は食後の血糖値が急激に上がるのを防ぎ、血糖値の安定を目指す食事療法だ。血糖値を下げるために分泌されるインスリンには、脂肪をため込む作用もあるため、減量にも効果があるとされる。

 熊本市で16~18日に開かれた日本糖尿病学会の学術集会では、いくつものセッションで糖質制限がテーマに。なかでも「カロリー制限と糖質制限を考える」討論会は、前向きに課題を語り合う議論が行われた。

 カロリー計算の基本となる「食品交換表」編集委員の福井道明・京都府立医大講師は、「継続率が低く、長く続けると心筋梗塞や脳卒中の発症率を増加させる」とリスクを指摘しつつ、減量や血糖値安定の効果は認め、「野菜や食物繊維を十分取り、脂質やたんぱく質の質を考えることが必要」と安全に行う方法を提案した。

 糖質制限を勧めている山田悟・北里研究所病院糖尿病センター長は、長期的な安全性は完全には証明されていないと認めたうえで、「カロリー制限では無理な人を、どう救うのかという議論が必要」と二次的な食事療法として採用すべきだと訴えた。

 このような状況が実現したのは、3月に学会が出した糖質制限に対する提言の影響も大きい。

 糖質制限の歴史は100年近いが、糖尿病の食事療法はカロリー制限が主流で、異端視されてきた。しかし近年、減量や血糖値安定に効果があるとの報告が海外で相次ぎ、2008年には米国糖尿病学会が食事療法の一つに認めた。また、国内では一部の医師の影響で、カロリー計算に挫折した患者の間で、簡単ですぐに効果が出る極端な糖質制限が急速に広まった。

 一方、長く続けると死亡率などが高まるとする報告も増加。カロリー制限に固執する医師に不信感を募らせ、薬や通院を勝手にやめたり、肉や脂を無制限に取ったりする危険な方法も広がりを見せたことから、学会は、国内外の論文を検証して提言をまとめた。

 提言には二つのポイントがある。一つは、極端な制限は長期的な安全性などの証拠が不足しており「現時点では勧められない」と歯止めをかけたこと。もう一つは、逆に腎症などの合併症に配慮しながら、患者の好みや病態に応じて、推奨されている糖質の摂取比率(50~60%)より減らすこともありうると、一定の理解を示したことだ。

 提言を検討した宇都宮一典・慈恵医大教授は、「糖質制限は、実質的に総カロリー制限につながることが多い。カロリー制限が基本という考えは揺るがないが、食生活の変化や個人の好みにも柔軟に対応する必要がある」と話す。

 だが、学会が否定する「極端な制限」とはどれぐらいなのか、安全に減らせるとしたらどれぐらいかという基準は具体的に示されず、提言内容に疑問を抱く患者もいる。カロリー制限が続けられず、糖尿病網膜症で視力が落ちた男性(55)は、3食主食を抜き、ヘモグロビンA1cを10・2%から5・9%の正常値にした。「将来の心臓発作より、どんな方法でも目の前の失明を回避する方が大事。どこまでの制限なら効果的で安全なのか患者の立場に立った評価研究をしてほしい」と願う。

 欧米とは食生活も体質も違う日本人で、糖質制限を検証した研究はまだない。提言は「学会として積極的に調査・研究の対象とすべき課題」と明言しており、今後の動きが注目される。(医療部 岩永直子)

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