文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

新型コロナウイルス…「SARSの再来」警戒

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 新型コロナウイルスの感染が中東、欧州で広がっている。

 2003年に中国で大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の仲間で、5月に入って感染者が急増。人から人への感染も疑われ、患者41人のうち20人が死亡した。政府は渡航注意を呼びかけるなど、新たな感染に警戒を強めている。

 「警戒態勢を緊急に強化する必要がある」。今月12日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスに対する感染の拡大を懸念し、各国にこう呼びかけた。サウジアラビアで今月前半に感染者が急増したためだ。

 発端は昨年9月。WHOによると、サウジアラビアなどに渡航歴のあるカタール人の男性が発症した。患者の調査から、これまで人から検出されたことのない新しい種類のコロナウイルスであることがわかった。

 遺伝子解析からこのウイルスは、約8000人が感染し、800人近くが死亡したSARSに類似し、SARS同様、コウモリがもともと持っていたとみられることがわかった。ただ、中東で発生した理由や感染経路など多くは謎だ。

 人はこのウイルスに免疫を持たないため感染が拡大しやすい。患者の多くは、呼吸器症状を起こし、肺炎や腎不全などが重症化しやすい傾向にある。今月18日現在、サウジアラビアや英国など6か国で感染者が出た。

 そもそもコロナウイルスは、牛や豚、猫など様々な動物に潜んでいる。コロナウイルスの仲間は数十種類あり、京都産業大の大槻公一客員教授(獣医微生物学)は「変異しやすく、強い病原性が表れていても、一定期間で弱まっていく特徴がある」と話す。SARSも約8か月で終息した。

 国立感染症研究所によると、コロナウイルスは動物から人に感染することはまれだという。東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は「今回、変異を繰り返すうちに、人に感染しやすくなったのではないか」と分析する。人に強い病原性をもつタイプに変異したのは、SARSと今回の新型だけだが、二つの関連性はわかっていない。

 インフルエンザは、人から人への感染が爆発的に広がり「パンデミック(世界的大流行)」を引き起こすことがある。中国の鳥インフルエンザ(H7N9型)から目を離せないのも、その心配があるためだ。

 新型コロナウイルスの感染は、サウジアラビア東部の医療機関など、各地域の限定された場所で起きている。ただし、SARSの教訓から懸念される事態もある。SARSでは、他人への感染力が極めて強い「スーパー・スプレッダー」と呼ばれる患者が、周囲に感染を拡大させた。

 今回もスーパー・スプレッダーが現れるのか、現時点ではわからないが、警戒は緩められない。

 SARSでは外国人感染者が日本国内を旅行し、騒ぎになった。こうした経験から政府は対応を進め、外務省は渡航者に注意を呼びかけ、厚生労働省は、空港などにある検疫所に検査用キットを配布し、準備を整える。検疫の強化で早期発見をめざし、国内への侵入をできるだけ遅らせることがまず重要だ。

 しかし、航空機で短時間に国境を越えられる現在、水際阻止にも限界はある。感染研の松山州徳(しゅうとく)・ウイルス第三部室長は「このウイルスの潜伏期間を10日前後と考えると、日本にも気付かないうちに入ってくる可能性がある」と語る。

 専門家からは「鳥インフルエンザに目が向いて、医療従事者への周知が不十分」との声も聞かれる。症状だけでは、インフルエンザなどと区別しにくいため、新型コロナウイルスと診断されず、医療従事者に感染する可能性もある。

 万一、国内で発生した場合を想定し、医療機関で患者を厳重に管理して、感染拡大を防ぐ体制作りを進めておきたい。(科学部 浜中伸之)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事