文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

社会保障ナビ

yomiDr.記事アーカイブ

初診料の違い どうして?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
作図・デザイン課 閑野朗子

 紹介状を持たずに大きな病院にかかると、初診料が高くなることがあると聞きました。なぜですか。

大病院への集中防ぐ狙い

 初診料は、医療機関に初めてかかる時に支払う費用のことだ。血圧測定など基本的な検査や問診、カルテ作成などの費用とされている。

 窓口で支払う金額は、自己負担3割の場合で810円。6歳未満の子どもや、夜間や休日については加算される。

 注意したいのは、診療所などからの紹介状なしで大病院にかかると、初診料のほかに特別料金を求められる場合があることだ。病床200床以上の病院に特別料金の徴収が認められており、全国約2600か所のうちほぼ半数の1174か所が実施。金額は病院ごとに独自に決めることができ、105円から8400円まで幅がある。平均は1998円。紹介状があれば、大病院でも初診料810円だけですむ。救急車で搬送された場合なども徴収されない。

 特別料金の制度は、患者が大病院に集中することを避け、病院と診療所の役割分担を進める狙いで、1996年度に導入された。

 日本では、保険証があればどの医療機関でも自由にかかることができる。便利な一方、患者の中には、軽い病気でも安心感を求めて大きな病院にかかる人が多い。この結果、病院勤務医が軽症の外来診療に追われて疲弊し、本来の専門治療に専念できないのが現状で、医師不足の一因とも指摘される。国の調査では、病院勤務医の4割が外来診療を負担に感じ、8割が「軽症なら近隣の診療所を受診してほしい」と答えている。

 そこで、紹介状のない人に特別料金を課すことで、まず診療所を受診するよう誘導を図った。

 ただ、患者にとっては手間がかかるうえ、紹介状の費用負担(3割負担で750円)も生じる。そのせいか、実際は大学病院の初診患者の56%が紹介状なしで受診するなど、効果は今ひとつ。このため、政府の社会保障制度改革国民会議では、紹介状なしの大病院受診について「1万円などの定額自己負担を導入すべきだ」との意見も出ている。

 病院と診療所の役割分担を進めるには、普段からの連携強化や、幅広い診断ができるかかりつけ医の養成も課題。高齢化で医療費が膨張するなか、効率的な医療提供体制の構築が急がれる。(小山孝)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

社会保障ナビの一覧を見る

最新記事