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いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

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仕事とがん治療両立 悩みは「男の肌」

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外来化学療法 仕事しながらがん治療

 課長のIさんは、銀行に勤める52歳の男性です。白髪が目立ち始めた頭を短く刈り、しっかりとネクタイを締めて毎日仕事に励んでいます。そんなIさん、実は2年前に大腸がんの手術を受けたのでした。それまで、お酒もたばこも吸わない生活をしていましたが、会社の定期健診で「便潜血陽性」と言われ、専門病院で検査したところ、S状結腸というところにがんがみつかりました。

 治療は腹腔鏡手術でしたので、手術後のキズの痛みは思っていたよりも楽だったそうです。術後に主治医から病理組織検査の結果から抗がん剤の治療をすすめられ、この2年間定期的に週末には「外来化学療法」を受けてこられました。

 最近よくがん拠点病院で行われている「外来化学療法」は、抗がん剤による点滴治療を、入院しないで外来通院で行う方法です。入院の必要がないため、働き盛りの人にとっては大変ありがたい治療法のひとつになっています。

 雨の日も、真夏日も、雪の日も、Iさんは自宅から電車で病院へ治療を受けに通いました。主治医から「体の調子はどうですか?」と聞かれると、決まって「大丈夫です」と答えてきたIさん。実際、管理職としての仕事も手術前と変わらず続けてこられましたし、休みは家族で旅行にも出かけてきました。仕事を休むことなく、がんの治療が2年も続けられてきたことに、Iさん自身も会社の人たちも、驚いていました。

男にも肌の悩みはあります

 そんなIさんにも、ひとつ困っていることがありました。それは、薬による肌への副作用です。

 大腸がん術後に使われる抗がん剤にセツキシマブ(アービタックス)というEGFR系阻害薬があります。この薬の副作用で顔と背中に紅いブツブツができてしまうのです。まるで中学生のようにニキビができた顔で仕事へ出かけるのは、Iさんもやはり気が滅入ります。

 悩んだIさんから「漢方治療で何かいい方法はありませんか?」と相談を受けました。「よくテレビで、美容や肌に良い漢方薬があると、宣伝していますよね。抗がん剤の副作用でできるニキビは、漢方薬では治りませんか」と切実な願いでした。

 そこで、いつもニキビに処方する漢方薬を服用していただきました。しかし、結果は、思った効果が得られません。「先生、あまり良くなりません」と困り顔のIさんを前に、わたしもしばし考え込んでしまいました。

西洋薬と漢方薬の併用できれいに

 そんなある日のこと、Iさんが外来へお見えになりました。するとこれまでのブツブツが嘘のようになくなり、ニキビのないきれいな肌になっているではありませんか。

 Iさんに、何が起こったのか聞いてみました。すると、たまたま受診した他の外来でテトラサイクリン系抗生物質(ミノサイクリン)を処方してもらったところ、数日でスーッと紅味が引いて治っていきました、とのことでした。

 わたしがこれまで何人もの患者さんへ治療した経験から、こんなに短期間でよくなったケースは初めてでしたので、たいへん驚きました。

 このときのわたしは、漢方薬だけで治そうとして、西洋薬との併用という選択肢を忘れてしまっていたわけです。改めて西洋薬と漢方薬の併用という選択肢を思い出させてもらえた貴重な経験となりました。

 西洋薬の抗生物質と漢方薬を併用したことで、Iさんの悩みの種が一気に解消されました。きれいな顔になったIさん、ますます元気に仕事とがん治療を両立しています。

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いまづ医師の漢方ブログ_顔120

今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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1件 のコメント

まさに今日

のん

担当のマッサージ師さんが大腸ガンの闘病をしながら仕事を続けておられて、まさに今日、吹き出物の話をなさっていました。 次お会いしたらこういう記事が...

担当のマッサージ師さんが大腸ガンの闘病をしながら仕事を続けておられて、まさに今日、吹き出物の話をなさっていました。

次お会いしたらこういう記事があったと伝えてみます。

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