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電子カルテの信頼性 改ざん防止、監査制度必要

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ある電子カルテの画面。書き換えた部分には修正線が引かれた状態で残っている

 政府が旗振り役となり、電子カルテの導入が推進されている。書き換えても履歴が残り改ざんの心配がないともいわれてきた電子カルテだが、裁判で改ざんが認定されたケースが出て、信頼性が揺らいでいる。

 カルテの改ざんは、医療事故で患者と医療機関がトラブルになった時、しばしば問題になってきたが、電子カルテの導入で、「書き換え履歴が残るからできなくなる」と言われてきた。

 ところが、ある裁判で電子カルテを医師が改ざんしたことが認定され、被害者団体から「電子カルテの改ざんができるなら手書きより巧妙化しかねない」と懸念する声が上がっている。

 問題の裁判は、昨年3月に大阪地裁で判決が言い渡された損害賠償請求訴訟。昨秋、司法雑誌で取り上げられ知られるようになった。精神科診療所に通院中の患者が薬を大量に飲んで死亡したのは、抗うつ剤を処方した医師が適切な服薬指導をしなかったことなどが原因として、家族が提訴した。

 被告の医師に賠償を命じた大阪地裁の判決は、医師が、服薬指導を行ったとする記述を複数箇所書き加えてカルテを改ざんしたと認定。診療所の電子カルテは、書き換え前の記述が保存されない設定になっていたと指摘した。被告は控訴したが今年1月棄却され、原告側勝訴が確定した。

 厚生労働省によると、電子カルテは、2011年度時点で、病院の場合、400床以上は51%、200~399床で27%、20~199床で14%、診療所でも20%ほどが導入している。

 同省が定めた医療情報の安全管理指針では、電子カルテは、改ざんを防止し正確さを確保する「真正性」、必要に応じ容易に肉眼で見たり書面に表示したりできる「見読性」、所定の期間安全に保存できる「保存性」という3条件を満たす必要があるとしている。

 改ざん防止機能がなければこの条件を満たしていないことになり、通常は、書き換え後も過去の状態が保存されたり、修正線などで書き換え痕が残ったりと、改ざん防止策がとられる。

 ただ、電子カルテは、大手メーカーの製品から医師の手作り品まで多種多様なうえ、条件を満たしているかどうかの事前審査や運用後の監査制度はなく、いわば野放し状態だ。

 東京3弁護士会の医療訴訟に関する検討協議会は、カルテの電子化が進む中で、証拠保全のあり方を研究する小委員会を設けている。改ざんが認定されたことを踏まえ、委員長の棚瀬慎治弁護士は「カルテ改ざんは患者だけでなく医療機関にとってもマイナスでしかない。厚労省は指導を徹底すべきだ」と指摘する。

 同委員会では、関係機関に適切な対応を求め提言するなど、何らかの働きかけも検討したいという。

 そもそも、電子カルテの改ざんは可能なのか。

 国立大学病院の担当者によると、システムが大規模で複雑な大病院では、仮に改ざんしようとしても多大な手間と専門知識が必要で、「現実的には無理だと思う」という。しかし、「小規模施設ならできてしまう可能性がある」とも話す。

 「世の中に100%完璧な技術はない。改ざんしにくいとしても、できないということはないと考えるべきだ」と、電子カルテに詳しい東大政策ビジョン研究センターの秋山昌範教授は警告する。

 防止策として、秋山教授は「クラウド(インターネット上でデータを保存する仕組み)化して情報を第三者の管理する複数のサーバーに分散して外部保存するとか、認証や監査の制度を作るなど、運用で回避するしかない」とする。

 診療記録が適正に、しかも安全に管理・保存されることは、医療の信頼性に直結する。3条件を間違いなく担保するため、必要な対策を講じるべきだ。

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