文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

進むマンション建て替え

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

円滑化法を利用 住民の理解得やすく

建て替え工事が行われている「調布富士見町住宅」。新たなマンションは2年後に完成予定だ(東京都調布市で)

 マンション建て替え円滑化法を利用したマンション・団地の建て替え事例が少しずつ増えている。住民参加の「建て替え組合」が作られ、住民の理解を得ながら計画を進めやすい。

 東京都調布市の「調布富士見町住宅」は1971年に完成した分譲団地。5階建て計5棟(176戸)を現在、建て替えている。新しいマンションは2015年完成予定で、地上8階地下1階などの2棟計331戸となる。建て替えで増える住戸を販売して、建築費用に充てるため、旧住民の費用負担はない。

 建て替え組合理事長の今井裕隆さん(79)によると、団地は老朽化のため、水道管の水漏れなどの悩みがあった。このため、大規模修繕を検討していた。

 ところが費用が想像以上にかかることが判明したほか、エレベーターがないことへの不満もあり、建て替えに切り替えたという。

 過去の実績から、事業協力者として「旭化成不動産レジデンス」(東京)を選定。管理組合総会で建て替え決議を行った後、同社と相談の結果、マンション建て替え円滑化法を用いることになった。

 円滑化法施行以前、マンションの建て替えは、等価交換方式と呼ばれるやり方が主流だった。住民が持つマンションの区分所有権をいったんデベロッパーに移し、工事はデベロッパー主体で行われる。住民は、新たな区分所有権を得る契約をデベロッパーと個々に結ぶ手間がかかるほか、建設中にデベロッパーが倒産すると土地が返ってこないなど、心配な点もある。

 円滑化法は2002年に施行された。同法に基づく建て替えでは、建て替え決議に賛成した住民とデベロッパーなどで設置した組合が主体で計画を進める。住民の区分所有権を、新マンションの区分所有権に移す計画を組合が作成し、都道府県知事などの認可を受ける。住民は所有権を手放す必要がなく、計画全体を把握でき意見も言いやすい。

 「円滑化法を利用したほうが、住民の理解を得やすいと判断しました」と今井さんは話す。

 国土交通省によると、円滑化法を使った建て替え事例は昨年10月時点で全国に65件(工事実施中を含む)。施行当初は利用が進まなかったが、5年前から円滑化法を利用する事例が多くなっている。

 旭化成不動産レジデンスのマンション建替え研究所主任研究員、大木祐悟さんは「知事の認可が必要になるなど、手続きに時間がかかるが、透明性などのメリットがあるので、円滑化法で建て替え組合を作るケースが増えている」と話す。

 円滑化法による建て替えでも、区分所有者の5分の4以上の賛成などが必要で、この点は以前と変わらない。

 マンション管理組合などからの建て替え相談に乗っているNPO法人「マンション再生なび」(東京)事務局長の関根定利さんは「円滑化法を利用する場合でも、大事なのは住民同士の合意」と話す。「大規模修繕で対応することも考えられる。説明会や広報誌などで建物の現状や決定した事項などを丁寧に伝えることが重要。住民同士でしっかり議論していくことが求められる」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事