遺伝のはなし
からだコラム
[遺伝のはなし]医学的根拠 不十分な検査も
「私はどんな職業に向いてるのだろう?」「我が子にはどんな才能があるのかしら?」「自分の体質に合ったダイエット法があれば知りたい!」
どれも、答えが得られたらとても便利ですね。最近、才能や肥満体質などについて診断できるという遺伝子検査が増えてきています。それって、本当に信頼できるものなのでしょうか。
今のところ、単独で決定的に人の才能に影響を与える遺伝子は見つかっていません。複数の遺伝子が関与する可能性はあっても、個々の関与の度合いは低いと考えられます。ヒトの脳の仕組みはとても複雑で、一つや二つの遺伝子で制御できるものではありません。遺伝子は基本の神経細胞の形成などには影響するかもしれませんが、あとは発達に応じて独自のネットワークを獲得していくのです。
音楽の父・バッハの家系は、傑出した音楽家を数多く輩出しました。バッハの1人目の妻はまたいとこでもありました。2人目の妻は歌手でした。一方、モーツァルトは代々の音楽一家ではなかったものの、音楽的な環境に恵まれて育ちました。
多くの病気が遺伝子と環境の双方の影響で発症するのと同じく、人の才能も遺伝子と環境の双方が相まって開花し、形成されていくものなのでしょう。
才能や肥満体質を調べる検査など、インターネットなどで申し込める遺伝子検査は、医学的な根拠が十分でないまま行われているものが多いと言えます。そのほとんどで遺伝カウンセリングは行われていません。結果を決定的と捉えるのではなく、あくまで参考程度に考えた方がいいかもしれませんね。(四元淳子、昭和大病院認定遺伝カウンセラー)
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