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認知症 明日へ

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[続・本人の思い]仲間が集えるカフェ運営

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夫婦で協力 就労支援へ

認知症カフェで、参加者と歓談する山本きみ子さん(左)と雅英さん(富山市で)

 富山市に住む若年性認知症の山本きみ子さん(63)は、夫の雅英さん(65)と4月から、認知症の人や家族の居場所作りに携わる。

 「社会とつながること」を大切にしてきた夫婦は、悩みを自由に語り合え、楽しく過ごせる場に育て、就労支援にもつなげたいと意気込む。

 JR富山駅前のビル7階。窓から立山連峰が見える部屋に、認知症の人や家族4人が集まってきた。

 「認知症の人と家族の会」富山県支部が4月から始めた「認知症カフェ ぽーれぽーれ」だ。気軽に立ち寄って思いを語り合ったり、楽しく交流したりできる場として、毎週月・水曜日の午後、2時間ずつ開いている。利用料(お茶代)は1人100円。運営費は、「赤い羽根共同募金」の助成金などで賄う。このカフェの運営を任されているのが、山本さん夫婦だ。

 この日は、ボランティア2人を含む計8人がテーブルを囲んだ。参加した家族が、認知症の母親が徘徊(はいかい)して困った体験を語るのを、きみ子さんは真剣な表情で聞く。隣に座る雅英さんに向かって、「私も、上手に出ていくよ」と冗談めかして語ると、参加者から笑いが漏れた。1時間ほどの懇談の後は、参加者全員でヨガを体験したり、手話を交えながら童謡を合唱したりして過ごした。

 きみ子さんは「認知症になって家に閉じこもっていると症状が進む。なるべく外に出て、動いている方が症状が進まないよ、と知らせてあげたい。私自身もそうだから」と語る。

 きみ子さんは、看護師として病院や高齢者施設で働いた後、保育所に勤めていたが、59歳の時にアルツハイマー型認知症と診断された。退職して、家でのんびりする時間が増えた反面、社会とのつながりがなくなり、寂しさを覚えた。

 知人の紹介で、3年ほど前から、認知症の人の通所施設でパートで働くようになった。毎週2回、血圧や体温を測定して利用者の健康を管理した。元郵便局員の雅英さんも、ホームヘルパー2級の資格を取って、一緒に働き始めた。

 しかし、次第に検温などに手間取るようになり、雅英さんが測定や記入を手伝う場面が増えた。きみ子さんは「人前でもたもたするのが恥ずかしかった。自分の仕事をきちんとすることができないのが、つらかった」と振り返る。

 そんな頃、カフェ開設の話が持ち上がり、今年3月、通所施設でのパートを辞めた。「認知症であっても、あれだけ働くことができた」とやや誇らしげに語る。

 海外にも積極的に出かける。診断後に訪れた国は約10か国に上る。昨年9月には、中国・四川省の世界遺産「九寨溝(きゅうさいこう)」を夫婦2人で旅行した。「山があって、透き通るような、きれいな水が流れていた」と、きみ子さん。今年4月中旬には、台湾で開催された「国際アルツハイマー病協会国際会議」に、地元の家族会のメンバーらと参加し、「本人交流会」にも出席した。夫婦で認知症カフェの運営にかかわっていることや、掃除や料理などの家事を夫と分担して続けていることなどを紹介した。

 きみ子さんは「認知症は病気の一つで、仕方のないこと。認知症の人も、せっかくの人生を楽しむ権利がある。楽しい思い出を作りたい」と思いを語る。

 雅英さんも、認知症カフェの充実に意欲的だ。きみ子さんと一緒に通所施設に勤めていた時、若年性認知症の利用者の就労支援に力を入れた。利用者とともに一般家庭を訪れ、草むしりなどを低料金で請け負ったところ、わずかでも報酬を手にした利用者が自信を取り戻す姿を間近に見てきた。

 そのため、認知症カフェの活動を拡大し、将来的には、就労支援にもつなげたいと構想を膨らませる。「もちろん、病状を見ながら、妻と一緒に活動を続けたい」と雅英さん。きみ子さんは「何でもやりたい人だね」と、ほほ笑んだ。(野口博文、写真も)

 ※山本きみ子さんを取材した昨年の記事はこちらから。

 [本人の思い]山本きみ子さん(1)もしかして私、認知症

 [本人の思い]山本きみ子さん(2)自然体で 隠さず生きる

 [本人の思い]山本きみ子さん(3)看護の仕事 社会と接点

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