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性的少数者の診療所・井戸田一朗医師(2)全国から患者が

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 ――国内では例がない診療所ということで、経営に不安はありましたか。

 「普通は開業する時、医療コンサルタントに相談して、その地域にどれくらいの患者がいるのか見積もってもらいますが、性的少数者を主な対象にする診療所では、そのような見積もりができません。果たして経営が成り立つのか、とても不安でした」

 「でも、HIV陽性者に必要な施設という点では自信がありました。全国にHIV診療拠点病院がありますが、通常、診療は平日の昼間だけです。会社員だったら、受診日は何らかの理由を作って仕事を休まないといけません。ここは平日は夜9時まで、土日も夕方まで診療しています」

 「病気は精神状態と密接に関わりますが、一般の診療所ではゲイやレズビアンであることは言いにくいのです。この診療所は、患者さんはインターネットや口コミで情報を得てやってくるので、診療のハードルは最初から低い。自分も、医療者であると同時に、ゲイならではの視点で患者さんの話に耳を傾けます。まだまだ開設にかかった借金は返せませんが、患者さんは北海道から沖縄まで全国からやって来ます」

 ――診療所の概要を教えてください。

 「診療科は内科、形成外科、皮膚科、精神科、婦人科があるほか、臨床心理士によるカウンセリングルームも設けています。HIV感染が判明すると、本人は同時にいろいろな問題をつきつけられます。性的少数者全般に言えますが、家族や社会との関係で悩み、うつ病などの精神疾患や自殺、アルコールやたばこなどの薬物への依存が多い。心の健康はとても重視しており、4人のカウンセラーがいます」

 「設立理念は3つあり、性的少数者の立場に配慮し、安心して利用できる医療サービスを提供する、性的少数者の生活を行政・NGO・医療機関など他の社会資源と協調しながら医療の側面から支援する、診療活動から得られた知見を当事者及び広く社会へと還元する、です。同性愛者のセックスは否定しません。安全にできる方向に持っていくことが大切です。写真入り男性向け性感染症パンフレットも作り、ホームページからダウンロードできるようになっています」

井戸田一朗(いとだ いちろう)
 1970年、名古屋市生まれ。岐阜大医学部卒。都立駒込病院内科研修医、WHO南太平洋事務局、東京女子医大感染症科などを経て、「しらかば診療所」開設。共著に「同性愛入門」など。


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