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いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

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女性のがん 漢方薬で悪化?

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 わたしが村田高明先生(現日本臨床漢方医会理事長)から約15年前に漢方医学を学んだとき、村田先生の外来には毎回100人近くの女性の患者さんが受診されていました。ここで学んだことが基礎となり、この2年間、わたしは女性専門クリニックの診療を担当し、約1万人の患者さんの体調を事細かにおうかがいする貴重な経験をさせていただきました。「女性ホルモンの変化で、肉体的な体調も精神的な気分も大きく変わる」ことや「ちょっとした気温や気圧の変化など気候によって、体調が影響される」ことなど、女性特有の体調について多くのことを学びました。

 この女性専門クリニックでは、北里研究所に日本で初めて「冷え症外来」を開設した渡邉賀子先生の診療を間近で見ることができました。女性を健康で元気にするためには「冷え症」の治療が重要なこと、それが他の体調不良の改善のポイントになることを学びました。

 このことから、「女性のがん」治療には「冷え症」の治療が不可欠であることに気づきました。

女性ホルモンが関係するがん

 女性に特有のがんと言えば、乳がん、子宮がん、卵巣がんなどがあげられます。乳がんは、男性の患者さんもいて、男女比は1対100ですが、子宮がん、卵巣がんは、女性特有です。すべて女性ホルモンが関係する悪性疾患です。女性ホルモンによってがん細胞が増殖する場合があるため、がん細胞を抑える目的で、女性ホルモンを抑制する治療が行われています。

 漢方薬が女性の病気によく用いられることから、女性ホルモンと同じような作用があると考えられ、「女性のがん」ではがん細胞を増殖させるのでは?と勘違いされる方がいますが、大きな間違いです。乳がん治療を担当している医師や薬剤師からも、「女性ホルモンの刺激で増殖する性質を持つがん細胞(エストロゲン受容体陽性がん細胞)に漢方薬を投与してよいのか?」とよく聞かれます。

「作用せず」実験で明らかに

 これについては、基礎実験の結果がありますので紹介します。

 月経不順、不妊症、更年期障害などに良く用いられる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を女性ホルモンの刺激で増殖する性質を持つがん細胞(エストロゲン受容体陽性がん細胞)に投与します。女性ホルモン(エストロゲン)を投与した場合は、がん細胞は増殖しますが、3種類の漢方薬を投与した場合は、がん細胞は増殖することはありませんでした。

 この結果から、「これらの漢方薬は、女性ホルモンの刺激で増殖する性質を持つがん細胞を増殖させる作用は、ない」という結果が得られています。「女性のがん」治療には、漢方薬を安心して活用することができるわけです。

 このように、基礎実験などの科学的根拠をしっかりと押さえた上で、漢方医学をがん診療に活用することによって、いまより多くのがん患者さんの苦痛を少しでも軽くすることができるものと信じています。

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いまづ医師の漢方ブログ_顔120

今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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2件 のコメント

本当に漢方?

漢方子

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漢方は漢方独自の概念でこそ漢方薬及び種々の治療法としての本来の力を発揮する。西洋サイエンス基本の日本医学会で、患者かも知れないが、物事の捉え方を誤ると素晴らしいものでも間違った方向に行かないか。せっかくの漢方が西洋あかん方になってしまはないか?

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漢方薬の種類によるのでは?

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掲出されている漢方薬は、いわゆる更年期障害に効果のあるものですが、ある漢方病院で治療を受けた際に、閉経状態から体重増加傾向にあることから、加味逍遥散と葛根湯を投与されました。お薬辞典やサイトなどを見ると、葛根湯は大豆イソフラボンなどと同様の成分を持ち、食物からの摂取や風邪の際に数回服用するのであれば問題ないが、過剰摂取には問題があると掲載されていました。病院なのに、痩せるために葛根湯を投与する、もちろん乳がんの治療中であることも報告済みです。漢方医も薬を出した薬剤師も玉石混交だと不安を感じました。

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