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がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~・コラム

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押し寄せる「情報の波」

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 皆さんは、「情報の波」にうまく乗って、それを活用できていますか?

 それとも、洪水のように押し寄せる「情報の波」に翻弄されてしまっているでしょうか?

 「情報化社会」と呼ばれるようになって久しいですが、インターネット等の普及もあり、情報量の増加は今も加速しています。少なくとも私自身は、情報の波に乗るというよりは、翻弄されていることの方が多い気がします。

 波に乗っているつもりで、自分のために情報を集めているうちに、いつの間にか、波に飲まれて、自分が本当に求めていたものを見失ってしまう、なんていうこともあるようです。

情報に翻弄されて

 診察室で患者さんとお話していても、それを感じることがあります。がんの患者さんやご家族は、がんという未知の相手と向き合う中で、情報に敏感になっています。自ら情報集めに奔走される方も多くおられますし、新聞やテレビなどでがんに関する情報があれば、少しでも役立つことがないかと、それに飛びつきます。

 テレビである新しい治療法が取り上げられれば、診察室では、その後数日間、多くの患者さんがその治療法のことを話題にしますし、それは、少なからず治療方針にも影響を及ぼします。

 「昨日のテレビで、○○療法の特集を見ました。私もあの病院に行きたいので、紹介状を書いてください」

 「○○療法でがんが治った人がいるそうです。今の治療はやめて、○○療法にかけてみたいんです」

 その「○○療法」が本当に役立つのならいいのですが、残念ながら、そういうことはあまりなく、情報に翻弄されるだけのことが多いようです。

 情報がたくさんあるのは、けっして悪いことではありません。でも、情報には、正しいものと間違ったもの、質の高いものから質の低いものまでいろいろあるということは知っておく必要があります。それを見極めて、本当に役に立つ、正しい情報だけをうまく活用できればいいのですが、それがなかなか難しい。

信頼度を決めるのは・・・?

 実際には、「正しさ」よりも、「わかりやすさ」「インパクトの強さ」「聞こえのよさ」などが、情報の信頼度を左右してしまっているようです。

 たとえば、診察室で私がどんなに説明しても、

 「だってテレビでそう言ってたんですから」

 という一言で退けられてしまうことがあります。医者の言葉よりも、テレビの言葉の方が信頼されているということですね。

 もちろん、「正しさ」は見方によって違いますので、誰もが認める「正しさ」の基準を決めることは困難です。医療というのは、もともと不確実な要素が大きいので、絶対的に正しいと言い切るのが難しいという問題もあります。

 それでも、医学の世界では、「正しさ」や「質の高さ」を相対的に評価する、共通のモノサシとルールが決められています。そのモノサシのことを、「エビデンス」、ルールのことを「EBM(注:Evidence-based medicineの略。エビデンスに基づく医療の意)」と言います。これらは、患者さんが情報の波にうまく乗るためのカギにもなると、私は考えています。次回以降、その説明をしていきます。

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高野先生コラム_顔120

高野利実(たかの・としみ)
腫瘍内科医。東京生まれの神奈川育ち。1998年東京大学医学部卒。2010年より虎の門病院臨床腫瘍科部長。国立がん研究センター中央病院、東京共済病院などで、抗がん剤治療を専門に手がけてきた。がん薬物療法専門医会代表も務める。

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