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いのちに優しく いまづ医師漢方ブログ

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骨の化石も薬に イライラにカルシウム

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 ゴールデンウイークは、どう過ごされる予定ですか? 日頃の肉体的ストレスと精神的ストレスを取るための休みとして、のんびりと過ごすのも良いと思います。わたしはこの連休、アロマセラピストの方と一緒に、漢方医学の勉強をする予定です。

 漢方薬の材料には、いろいろなものがあります。皆さんの中には、漢方薬というと、魔女が怪しげな壺の中へトカゲのしっぽや毒キノコを入れて、グツグツ煮ている姿を想像する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日本で使われている医療用漢方薬には、トカゲも毒キノコも入っていませんから、安心してください。

 主な材料は、植物の根や葉で、あとは木の実や茎など。普段、食卓に置いてあるものでは、ウナギにかける山椒、料理の味付けに使う生姜も使います。珍しいものとしては、牡蠣(かき)の貝殻や大型ほ乳類の化石化した骨などがあります。

 今回紹介するHさんは、肝臓がん術後の患者さんです。いまから10年前に右肺がんで手術を受けられた後、3年前にC型肝炎から肝細胞がんになり、ラジオ波焼灼術を受けられた町工場の親父さんです。

 このところHさんが外来にお見えになると「先生に相談しても、仕方がないんだけれど」と言いながら、仕事のトラブルについて愚痴をこぼすことが多くなっていました。先日は、「アベノミクスだそうだが、うちのような小さな工場は、毎日厳しくてねぇ・・・息子達のことを考えると、夜も眠れず、昼間、イライラがつのって仕方がないんだ」と貧乏揺すりをしながら、おっしゃりました。

 クリニックへおいでの患者さん達は、病気というストレスを抱えて入ってこられます。そんな荷物を少しでも軽くできないだろうか?と考えて、わたしはこう言いました。「う〜ん、カルシウムが足りないとイライラすると言いますからねぇ。漢方薬でカルシウムが一杯入っているものがありますから、それをお出ししますね」。

 処方したのは柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。牡蠣の貝殻や化石化した骨などが使われています。

 そして、漢方薬を内服するときには、まず温かいお湯に漢方薬を溶かしていただき、香りと味をゆっくりと感じながら飲んでもらうようお話しさせていただきました。

 しばらくして、Hさんが外来へやって来ました。前回と違って、少し落ち着いた雰囲気で、「あのカルシウムが入っている漢方薬、飲み始めてから仕事がうまくいくようになったんだ。もうしばらく、だしてもらえないかなぁ」と話されました。どうも、イライラと一緒に仕事のトラブルも漢方薬が治してくれたようでした。

 ちなみに、この柴胡加竜骨牡蛎湯には、同じ名前でも製薬会社が違うと、下剤として使われる「大黄(だいおう)」が入っていたり、入っていなかったりしますので、医師に確認されると良いと思いますよ。

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今津嘉宏(いまづ よしひろ)

芝大門いまづクリニック(東京都港区)院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。

日本がん治療認定機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

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