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近親者世話する ケアラーの支援

 年齢、病気や障害の種類を問わず、家族や近親者などに無償で世話をしている人たちを「ケアラー」と呼び、介護や看病などに追われて疲れ、精神的に追い込まれてしまわないように支える活動が広がりつつある。交流の場を設けたり、ケアラーの手引となる手帳を作ったりする試みが始まっている。

カフェや手帳孤立防ぐ

ケアラーやカフェのスタッフらが、打ち解けた雰囲気のなか、近況を語り合う(ケアラーズカフェ&ダイニング アラジンで)

 東京都杉並区のJR阿佐ヶ谷駅近くにある「ケアラーズカフェ&ダイニング アラジン」を4月上旬の午後訪ねた。20平方メートルほどの店内では、コーヒーやケーキを前に40歳代と60歳代の女性客が親しげに語り合っていた。

 60歳代の女性は、認知症の母親(84)と4年前から2人で暮らす。介護に専念するため、同居後1年ほどで仕事を辞めた。

 感情の起伏が激しい母親と過ごす時間が長くなると、いさかいも増えて手をあげてしまうこともあった。そんな自分を責め、精神科に毎週通院するようになった。医師には「このままではあなたがつぶれる。母親と距離を置くように」と指導されても、ほかに誰にも相談できずにいた。

 カフェでは同じ境遇にある人たちと出会い、一人で抱え込んでいた悩みが分かち合えた。今では気分転換も兼ねて、介護の合間にほぼ毎日ランチに通う。精神科に通う回数も減った。女性は「つらいのは、自分だけではないと知り、本当に救われました」と話す。

 昨年4月にオープンした同店を運営するのは、NPO法人の介護者サポートネットワークセンター「アラジン」(東京都新宿区)。介護者が交流できる場として2009年から月1回のサロンなどを開いていたが、仕事などで出席できない人も多かった。

 同法人理事長の牧野史子さんによると、カフェ形式にしたのは、ケアラーが都合の良い時に足を運べる常設の居場所を作りたかったからだ。木曜、金曜日の午後5時半~9時半にはバーとなり、仕事帰りに日本酒やカクテルなどのアルコール類も楽しめる。

 牧野さんは「30、40歳代のケアラーも増えており、若い人でも気軽に利用しやすい場にしたい」と語る。

 ケアラーの実態を探るため、同法人などは10年に北海道、東京、京都など全国5地区約1万世帯を調査した。ケアラーがいるのは5世帯のうち1世帯。4人に1人は孤立感を覚えていた。

 調査に協力した地区の一つ、北海道栗山町は人口約1万3200人のうち65歳以上が3割を超える。町社会福祉協議会は「ケアラー手帳」を作って、昨年から介護が必要な世帯に配布。表紙には「大切な人を介護しているあなたも大切な一人」と記され、介護者自身の健康や気分をチェックする項目や、介護技術、相談窓口などの情報が盛り込まれている。

 昨年11月には、町の施設を借りてケアラー向けのカフェを開いた。様々なイベントも企画し、お年寄りから子どもまでが交流できる場を目指す。

 事務局長の吉田義人さんは「ケアラーが不安やストレスを一人で抱え込まないように、幅広い世代の住民が関わりあい、地域全体で支えていきたい」と話す。(野村昌玄)

ケアラー
 高齢者介護に限らず、ケアが必要な人たちに関わる多様な介護者を指す。障害者の介護や、がんや難病の人の看病をする人たちなどが想定されている。イギリスでは法整備も進み、民間団体と自治体の連携による相談窓口の設置や経済的支援なども行われている。
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