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出生前診断…まず「超音波」 専門外来で

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 妊婦の採血だけで胎児の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断が今月、日本医学会の認定施設で始まった。この検査を理解するには、従来の出生前診断との違いも知っておきたい。

 出生前診断は、結果によって「産む」「産まない」の選択が迫られる重い検査だ。

 先天的な異常は、生まれてくる子どもの4%に見つかる。原因は、染色体異常(25%)、単一の遺伝子の異常(20%)、母子感染や放射線被曝(ひばく)などの環境(5%)で、残る半数は原因が特定できない「多因子遺伝」だ。

 出生前診断でわかるのは、その一部。検査の種類によって対象とする病気は異なり、異常の有無を確定する検査か、疑いが強いケースを見つける検査(非確定検査)なのかも違う。

 今回始まった新型出生前診断は、ダウン症など3種類の染色体異常の病気が対象の非確定検査だ。いずれも染色体の数が1本多い病気で、染色体異常の子どもの7割を占める。血液のDNA断片の量から、胎児の染色体の本数を推測する。

 日本産科婦人科学会(日産婦)の指針は、検査前後の遺伝カウンセリングの実施を必須条件にしている。

 非確定の血液検査という点では、従来行われている母体血清マーカーも同じだ。血液中のホルモンやたんぱく質の数値などから、対象の病気である確率が「○分の1」で示される。

 これに対し、新型の検査結果は、「陽性」か「陰性」かで通知される。米国の検査会社シーケノムのデータでは、ダウン症の結果が陰性なら、99・9%以上はダウン症ではない。

 一方、陽性なら、受ける妊婦らの年齢が低いほど、結果が正しい確率は下がる。仮に35歳の妊婦たちが受けたら、陽性の100人中20人の子どもは、実際はダウン症ではない計算だ。

 認定施設では、陽性なら必ず羊水検査を受ける。胎児の異常を確定できるが、血液検査と異なり、流産の危険が0・3%程度ある。

 知っておきたいのは、新型検査はだれでも受けられる検査ではない点だ。

 日産婦の指針では、「高齢」より先に、超音波検査で疑いが強いケースを第一の条件に挙げた。検査でよく見つかるのは、胎児の首の後ろにある「NT」と呼ばれる浮腫(むくみ)。この部分の厚みが増すほど、病気の疑いが高まる。

 ただし、産科医が超音波で異常を調べる技術には個人差がある。NTも、間違った時期や方法での計測が問題になっている。

 超音波と遺伝の両方の専門医資格を持つ埼玉医大(埼玉県毛呂山町)産婦人科教授の亀井良政さんは「胎児の異常を詳しく知りたいなら、専門外来を受診するのが望ましい」と話す。

 胎児の先天異常を調べる超音波検査は、「胎児超音波スクリーニング」「超音波外来」などの名称で、通常の健診とは別に希望者に対して行われている。

 通常の健診でも、思いがけずNTなどを指摘されることもある。亀井さんは「動揺するとは思うが、すぐに超音波検査の技術の高い医師や遺伝カウンセリング体制の整った施設を紹介してもらいましょう」と話している。(中島久美子)

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