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がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~・コラム

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がんとともに生きる方法とは

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 がんと診断されたとき、患者さんは、不安になり、戸惑います。「頭が真っ白」になってしまう人もいます。治療方針の説明を受けても、初めて聞く言葉ばかりで、混乱した頭にはなかなか入ってきません。病気と治療の恐ろしいイメージだけが増幅し、追い詰められた気持ちで治療に取り組みますが、先の見えない不安に副作用の苦痛も加わって、気持ちが落ち着くことはありません。

 すべての患者さんがそうだというわけではありませんが、がんと向き合うとき、多くの方が、このように、「不安」「絶望」「不幸」を感じているのだと思います。医療というのは、そんな気持ちを、少しでも、「安心」「希望」「幸福」に変えていくためにあると、私は思っています。

あふれかえる情報

 でも、現実の社会には、「安心」「希望」「幸福」へ向かうのを妨げる要因がたくさんあります。医療に関する情報はあふれかえっていますが、中には、患者さんの「不安」「絶望」「不幸」を煽ることで利益を得ようとする人たちからの情報もまぎれこんでいて、患者さんは、そんな情報に翻弄されてしまいます。代替療法や書籍の広告では、「医者に殺されない」とか「○○で進行がんから生還した」とか、刺激的な言葉が並び、患者さんの心は乱されるばかりです。

 このコラムでは、これから数回にわたり、「がんとともに生きるための方法」を考えていくことにします。

  • がんとどのように向き合うのがよいのか?

  • 道に迷いそうになったときには、何を道しるべにすればよいのか?

  • 情報の波に飲まれそうになったときには、どのようにして情報を見極めるのがよいのか?

  • 重要な判断を迫られたときには、どのようにして意思決定するのがよいのか?

がんと向き合うキーワード

 予告をかねて、いくつかキーワードを挙げておきます。

 情報を見極めるために重要なキーワードは、「エビデンス(根拠)」と「エビデンスに基づく医療(EBM)」です。

 適切な「意思決定」をするために重要なキーワードは、「治療目標」と「リスク(不利益)とベネフィット(利益)のバランス」です。

 現代社会において、「安心してがんとともに生きる」ことを妨げる要因のキーワードは、「イメージ」と「センセーショナリズム」です。

 そして、すべての場面でいつも大事にしておきたいキーワードは、「価値観」と「語り合い」です。

 これだけだとなんのことやらわかりにくいと思いますが、これらのキーワードを中心に、できるだけわかりやすく考えていくつもりです。

 がんに直面し、医療や、情報や、がんをめぐるイメージに翻弄されがちな患者さんの道案内役になり、「安心」「希望」「幸福」を感じながら歩む手助けをできれば、と思っていますが、私は実は方向音痴ですので、皆さん以上に迷ってしまうことがあるかもしれません。そんなときは、読者の皆さんも一緒にこの問題に向き合っていただき、ご助言などいただければ幸いです。

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高野先生コラム_顔120

高野利実(たかの・としみ)
腫瘍内科医。東京生まれの神奈川育ち。1998年東京大学医学部卒。2010年より虎の門病院臨床腫瘍科部長。国立がん研究センター中央病院、東京共済病院などで、抗がん剤治療を専門に手がけてきた。がん薬物療法専門医会代表も務める。

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