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緩和ケアセンター 医師、看護師の補充急務

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 がんの早期から行う緩和ケアを普及するため、厚生労働省は今年度、都道府県がん診療連携拠点病院などに「緩和ケアセンター」の設置を促す新たな方針を示した。緩和ケアの医療現場は慢性的な人手不足状態にあり、医師、看護師らの育成と人員補充が不可欠だ。

 「今、一番気になっていることは何ですか」

 茨城県つくば市にある筑波メディカルセンター病院の緩和医療科。担当医の問いかけに、同市の女性(60)は思いを正直に語り、抗不安薬などの処方を受ける。

 女性は進行乳がん。緩和医療科の外来受診は、乳腺科の主治医に勧められた。精神的に落ち込んでいた時期だった。以来、抗がん剤の点滴が終わると毎回、緩和医療科外来へ向かう。

 「つらい気持ちを聞いてもらい、助けられた」

 同科の年間外来患者数は約600人。外来には5人の常勤医が所属する。志真泰夫副院長は「長期的な視点で緩和ケアの医師や看護師を育ててきた」と語る。

 がんは、骨や周りの臓器に広がると、強い痛みに苦しめられることがある。不眠や強い不安を訴えたり、症状が進めば意識障害を起こしたりもする。がんに起因した心身の苦痛に対処するのが、緩和ケアだ。

 終末期患者が入院する緩和ケア病棟はよく知られているが、近年はがん患者と家族の生活の質を保つため、「がんと診断された時からの(早期の)緩和ケア」が、国のがん対策推進計画で掲げられている。

 センターが設置される病院の外来では、がん看護専門看護師らが話を聞き、苦痛がある患者をもれなく緩和ケアにつなげる。そのうえで緩和ケア医らが外来・入院患者を問わず、専門的な緩和ケアを提供する。

 国は、病床確保などの費用として今年度予算案に1億円を計上し、病院からの事業申請を受け付ける。

 しかし、緩和ケアの現状はお寒い状況だ。

 がん患者会「シャローム」(埼玉県)代表の植村めぐみさんは、多くの進行がん患者から緩和ケアに関する相談を受けてきた。適切な緩和ケアを受けられない患者も多く、苦痛から「死んだ方がまし」と話す患者もいるという。

 読売新聞が昨年12月から今年1月に397のがん拠点病院に行ったアンケート調査では、回答した289病院の6割で、緩和ケア外来患者数が年間50人以下。年間250人以上の病院は1割にとどまった。

 外来が少ない主な理由は、医師などの人員不足だ。関東地方の拠点病院の緩和ケア医は「入院患者への対応が精いっぱいで、外来まで手が回らない」と打ち明ける。調査では、業務の8割以上を緩和ケアチームに充てる専従医が0人(無回答を含む)の病院は、44%の127か所もあった。

 センターでは、常勤医と専従看護師をそれぞれ2人以上置くなど、人員配置に厳しい要件がある。身体の苦痛を緩和する常勤医は専従医が望ましい、とする。病院によっては、医師、看護師の新規採用や配置換えによる補充が必要だ。

 緩和ケアセンターの機能は将来、全てのがん拠点病院に求められる可能性がある。拠点病院の指定要件として、センターとほぼ同じ機能が新たに提案されているためだ。早ければ2年後にも、緩和ケアの提供体制強化が義務づけられる。

 関西地方の大学教授は「近年、医学部に緩和医療の講座が相次いで設けられ、緩和ケア医育成は進んできているが、人数はまだ足りない。拠点病院以外の緩和ケア病棟から医師を引き抜く動きが出てくるかもしれない」と推測する。

 植村さんは「患者の苦しむ様は家族の心にいつまでも残る。多くの患者・家族を救う体制を作ってほしい」とセンター整備に期待する。これを機に全てのがん拠点病院は、緩和ケア提供体制作りに本腰を入れて取り組んでほしい。(医療部・渡辺理雄)

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