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[綾小路きみまろさん]骨董のぬくもり 話術に深み

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「骨董でも何でも夢中になる趣味が見つかると、人生が楽しくなります」(東京都武蔵野市で)=池谷美帆撮影

 山梨県・河口湖畔の自宅。収納棚には、江戸末期から明治初期にかけての小皿や蕎麦猪口(そばちょこ)徳利(とっくり)、鉄瓶などの骨董(こっとう)が所狭しと並ぶ。「昔の人が使った生活用品が好き。現代の新品にはないぬくもりがあってほっとします」。骨董の品々は3000を超えるが、「妻からは場所をとるので邪魔と言われています」と苦笑する。

 中高年向けの漫談ライブは年に100本以上。全国を飛び回る日々。たまの休日、自宅で古い皿などを手にとり、自分の手に入るまでの歳月を想像するのが幸せなひとときだ。

 「嫁入り道具として作られたのか。長く蔵に置かれたのか。戦争をくぐり抜けてきたのか。色んな空想がふくらみます」

 自宅に友人を招いて、こうした品で酒を飲んだり食事をしたりする。昨年末には近所の友人や骨董仲間を5、6人招いて、囲炉裏で酒を飲んだ。古伊万里の大皿に肉や魚をのせ、蕎麦猪口には焼酎のお湯割り。「料理もお酒も味がおいしくなった気がします」

 絵柄がよいとか、色がよいとか骨董談議も盛り上がって楽しい。今は忙しくて、年に数回しか会合を開いていないが、時間に余裕ができたら、もっと友人を呼びたいと思っている。働けなくなったら、畑いじりをして、人生の最後は囲炉裏ばたで蕎麦猪口に入れた焼酎を飲みながら、ことっと死ぬのが理想という。

 骨董を趣味とするようになったのは、演歌歌手のショーの専属司会者を務め、懐に少し余裕ができ始めた30歳過ぎの頃。当時、東京都内にあった骨董店が集まるビルに、休日、ふらっと入った。そこで、浮世絵の美人画が目に留まり購入した。眺めるうち、「背景に描かれた火鉢やお膳、茶わんなどの生活道具に興味を持つようになった」

 それから、都内の骨董市を訪ねたり、地方の骨董店に寄ったりして、大皿や(つぼ)、火鉢、小皿などを少しずつ集めた。

 下積み生活30年を経た50歳の頃、漫談の録音テープを大量に作り、無料配布したことが、ライブCDの発売につながり世に出るきっかけとなった。「自分の漫談を世に出したいという思いが強かった。ただ、骨董でもっといい品々を買いたいという気持ちも少しあった」

 最近、骨董もインターネット上で販売されていて、直接見たり触ったりすることが軽視されがちなのではと感じる。「骨董の品々との触れ合いは、人との触れ合いと同じ。どんな経験をしてきたかを聞いたり、想像したり。そして色んなものと出会うことで心も豊かになる」。そんな思いもあって、芸能界の友人らに集めた品々を贈ることもある。

 人気の漫談ライブは今後も続けていく予定。勢いよく1時間、話し続けられる声も、いつかは弱っていくだろうと覚悟している。「ゆっくり話をして人を説得できるようなさびのある話術ができるようになれば」。骨董のように、長い人生を感じさせる魅力を持ちたいと思っている。(小野仁)

 あやのこうじ・きみまろ 漫談家。1950年、鹿児島県生まれ。キャバレー司会などを経て、1979年に芸能界デビュー。2002年に発売した漫談ライブCDがヒットし、売れっ子に。今年3月には、ライブDVD「爆笑!最新ライブ名演集」が発売された。

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