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がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~・コラム

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腫瘍内科、機能しているか

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 抗がん剤などの薬物療法を担う「腫瘍内科医」。社会的にも、その普及を後押しする動きがあります。

腫瘍内科医 配置促す動き

 2007年には、「がん対策基本法」が施行され、全国で「がん診療連携拠点病院」の整備が進められるなど、国を挙げてがん対策への取り組みがなされています。国の「がん対策推進基本計画」では、重点的に取り組むべき課題として、「化学療法を専門的に行う医師の育成」が挙げられ、また、「がん診療連携拠点病院」の指定要件には、「化学療法に携わる専門的な知識及び技能を有する医師の配置」が明記されています。つまり、「腫瘍内科医が必要なので増やしましょう」ということです。

 この政策を受けて、文部科学省は、2007年度から、「がんプロフェッショナル養成プラン」という大学院のプログラムを展開し、全国の大学病院で腫瘍内科医などの専門家の養成を進めています。また、腫瘍内科の基幹学会である「日本臨床腫瘍学会」では、「がん薬物療法専門医」の育成と認定を行っていて、現在、871名の専門医が認定されています。

 マスメディアで「腫瘍内科」という言葉が紹介される機会も少しずつ増えてきましたので、この言葉自体は目にしたことがあるという方は多いと思います(このコラムのタイトルにも入っていますね)。でも、身近な病院の身近な診療科として腫瘍内科があって、皆さんのお役に立っているかというと、まだまだそれには程遠いというのが現状ではないでしょうか。

専門医の育成が課題

 追い風を受けて、「腫瘍内科」や「臨床腫瘍科」という名前を掲げる病院や大学は増えていますが、そのすべてが、きちんと機能して、患者さんからの期待や社会の需要に応えられているかというと、必ずしもそうではないようです。実際、「がん薬物療法専門医」が一人もいない「がん診療連携拠点病院」はたくさんあり、指定要件を満たすために、専門医の「取り合い」のような状況も生まれています。

 患者さんの失望とともに今ある追い風がやんでしまうようなことがないように、私たちは、患者さんの役に立つ「真の腫瘍内科」を作っていかなければいけないと思っています。数少ない専門医を取り合うのではなく、各病院が腫瘍内科医の育成を競い合うようにする必要もあるでしょう。

 2人に1人ががんになる時代ですので、がん医療のあり方や、腫瘍内科の必要性について、皆さんにも、自分の問題としてお考えいただければ、と思っています。

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高野先生コラム_顔120

高野利実(たかの・としみ)
腫瘍内科医。東京生まれの神奈川育ち。1998年東京大学医学部卒。2010年より虎の門病院臨床腫瘍科部長。国立がん研究センター中央病院、東京共済病院などで、抗がん剤治療を専門に手がけてきた。がん薬物療法専門医会代表も務める。

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