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質問(2)薬を減らしたい

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 Q)傾聴ボランティアをしている人からの質問です。うつの人の心のぶれに戸惑うことがあるが、どうやって付き合えばいいか。

 A)カウンセリングを受けに来る人は、人間関係、家族関係など、人に言いづらい未解決問題を抱えていて、話すことで答えを探そうとします。傾聴の意味はそこにあります。ただ、メンタルヘルスから考えると、X軸とY軸があると考えるべきです。X軸は精神的な問題を解決するということ、もう一つ、Y軸は、生活習慣の問題があります。例えば、短時間睡眠でいらいらした脳は、ものを考えてもいい知恵が浮かばない。だから、父との葛藤を語らせたら、自虐的になったり、昔のうらみつらみ、父にすまなかったこととか、極端な自己卑下や攻撃性が出てしまったりします。短時間睡眠は、怒り、憎しみ、後悔、悲しみ、あらゆる感情を増幅させる。睡眠不足の時の語りは、語っている本人をも欺くことがあります。なので、傾聴ボランティアの方は、お話を聞くと同時に、もっとフィジカルな点で、睡眠は足りているかとか、酒を飲みすぎていないかとか、きょう話したような点について尋ねてみることも大切かなと思います。

 Q)抗不安薬や睡眠薬は、長期間出し過ぎると依存性があり、やめるにやめられなくなり、悩み深めている人も多いと思うが、患者も眠れないから多剤服用を求める傾向があるとの指摘もある。医者が出し続けるのもいけないが、患者さんも希望してしまう、ということをどう考えるか。

 A)非常に大事な問題です。医者が患者を薬漬けにしていることもありますが、患者さんが希望する場合も多くあります。眠れないので睡眠薬をもっと増やしてくれないかと。とんでもなくひどい悪徳医者が患者を薬漬けにすると思っていらっしゃるかもしれませんが、実際には、善意の医者、いい医者、優しい医者が、患者を薬漬けにする場合もあります。患者さんが、うつだと言えば抗うつ薬、不安だと言えば抗不安薬、眠れないと言えば睡眠薬、という感じで、何か言ったらそれにお答えしなければいけないと思っている、患者さんに優しい医者もいます。優しい医者が患者さんを薬漬けにする場合も多いです。本当に困った問題だと思います。

 Q)市販の睡眠導入剤の使い方は?

 A)どうしてもの時だけに限定するべきで、続けて使わないことが大切です。睡眠薬は、眠れない不安を解消するために使うわけですが、最終的には、この時間に寝てこの時間に起きる、という体内時計リズムを作ることが治療の目的ですから、薬を飲むだけではだめです。大切なのは、起床時刻を一定にすることです。毎朝7時に目が覚めれば、17時間後には体内時計がオフになるようなリズムができて眠くなります。体内時計のリズムを作ってあげることが治療なのであって、睡眠薬は補助にすぎない。

 Q)睡眠薬やめると眠れなくなっている人もいる。どうすればいいか

 A)時間かけてじっくりと減らしていくしかない。4種類飲んでいたとすれば3種類に、強いものを弱いものに置き換えていく、そうして少しずつ減らしていって、そして目が覚めている17時間の密度を濃くする。ウォーキングする、運動をする、そうして疲れて眠るリズムを作ることです。日本の医者はよく睡眠薬を使いますが、忘れてはいけないのは、睡眠薬はほぼすべて、常用量で依存になることです。一日一錠だけ医者の指示通りに飲んでいるのだから大丈夫だ、と思っていても、毎日飲んでいれば依存になります。注意しなければいけません。常用量依存のことは、医者もあまり説明しないのですが、日本うつ病学会などで、常用量依存のことをもっと患者さんに説明してゆくべきだと舵を取り始めているので、みなさんも「先生の出したこの薬は常用量依存はありませんか」と、ドクターにお尋ねになるのもいいことかもしれません。

 Q)薬を減らしたいのだが相談に乗ってくれない医師もいる。どうやって医師と付き合って協力してもらうようにしたらいいか。

 A)どの外来も非常に込んでいて、初診30分、以後5分しかかけられない状態です。1時間に10人の患者さんが来ますから。持ち時間5分の中で、大事なことに焦点を合わせることが大切です。忙しいお医者さんは、あれこれあれこれバーっと言われると、医者もパニックになってしまって、表面的な薬の出し入れだけになってしまうこともある。一回の診察で、一番相談したいことを1つだけ、相談に行くのも、精神科医とつきあう1つの作戦だと思います。薬をどうやって減らすのかというとき、ご自身が、自分の希望をはっきりと医者に伝えることが大切です。睡眠薬や抗うつ薬を減らして、やがては薬のないヘルシーな生活に戻したいと、希望をおっしゃることが大切です。ただ忘れてはいけないのは、精神科の疾患の中には、統合失調症やてんかんのように、極めて長期にわたる薬物療法が必要だというケースもあります。絶対にやめてはいけない精神疾患もありますが、うつ、不安、不眠の場合は、いずれは薬を減らし、薬なしにできるはずなので、ドクターと話し合いを持ってください。

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