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医療部発

コラム

フランス終末期医療(1)胃ろうは治療の一環

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 昨年10月にヨーロッパ出張の機会があり、1週間足らずとわずかな期間ですがフランスの終末期医療を取材しました。要点は1月に解説面の記事に書きましたが、書き足りなかった点や印象に残ったことを5回に分けて紹介します。地理的にも文化的に距離はある国ですが、終末期医療を考えるひとつの材料になればと思います。

 解説面の記事に書いたように、特に興味があったのが胃ろうです。自分の口で食べられない患者が、腹部に開けた穴から胃に管を通して水や栄養をとる方法です。日本の胃ろう患者は約40万人ともいわれますが、近年、延命手段的な利用の増加に疑問を持つ人も増えています。欧米では、そのような胃ろうの利用は少ないといわれています。フランスも、認知症末期での胃ろうは基本的には行わない国といわれていますが、本当にそうなのか、現地で聞いてみようと思いました。

 結論から言うと、確かに日本とは全く状況が違いました。パリに向かう道中でたまたま知り合ったフランスのがん専門病院の医師に「胃ろうに関心をもっている」と話すと、「胃ろうはベリーグッド。食道がんなどで口から栄養を十分取れない場合、手術前から胃ろうにして栄養補給すると、術後の回復がとても早いよね」と予想外の答が返ってきました。胃ろうは、あくまで治療のために一時的に行う医療という認識だったようです。

消化器内科医のジャック・セーさん

 パリ近郊で開業し、胃ろうの手術を600件近く行っている消化器内科医のジャック・セーさんにインタビューした時も、日本の状況は容易に理解されませんでした。「胃ろうは栄養失調の改善法。回復見込みのある人に積極的に使い、延命のために機械的に行うことはない。使い方が日本と全く違うようです。なぜ日本ではそんなに多いのですか。命の尊厳を大切にすることは、必ずしも延命ではありません」と、逆に質問されてしまいました。「えー、やはり命が何より大切だし、少しでもそれを延ばせるのだから……」などと答えると、「国によって考え方は違いますよね」とセーさんは肯定的に応じてくれましたが、いまひとつ納得できない表情でした。

藤田勝(ふじた・まさる)
 2008年から医療部。終末期医療、大腸がん、皮膚疾患、耳・鼻の病気などを取材。アホウドリとアムールトラ好き。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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11件 のコメント

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日本人は考える時間が足りないのでは?

じぞう

日本の子育て世代を見ていると「考えていない」と感じる。まだ小学校に入っていない子どもに高価な学習教材を買い与えたり、小学生に高価なゲームを買い与...

日本の子育て世代を見ていると「考えていない」と感じる。
まだ小学校に入っていない子どもに高価な学習教材を買い与えたり、小学生に高価なゲームを買い与え、高校生に携帯電話を持たせて親が料金を払い、多くの大学生は学費が足りず奨学金という名の借金を背負わされて、社会人になると同時に借金返済を迫られる。

業績不振で大量にリストラする企業もあるのに、「とにかく子どもは有名企業に入社させたい」と考える親が多い。
「本人がぐずぐずしてやる気がないから」と就職先を親が決めたがる。本人に決めさせようとしない。

考えればわかることを、雑誌やネットで情報収集して「人から勧められた判断基準」で行動する人が多い。
あるいは「隣近所がそうしているから」という判断基準で行動する人も多い。

「幸せとは、好きなときに好きなものが買えること、好きなものが食べられること、つまりお金があること」と思っている人が多いような気がする。
もっとまじめに「幸せとは何か」を夫婦で、あるいは親子で話し合うべきだろう。
日本には「幸せ」を扱ったいいアニメがたくさんあるのに、そこから学んで実践できている人が少ない気がします。

幸せの基準は「本人のもの」あるいは、本人が意思を表明できない場合は「妻か夫」「子ども」が決めるべきであり、周囲は彼らの意思を尊重してサポートする立場ではないかと考えます。
「幸せ」についてきちんと時間をかけて考えている人がまだまだ少ないのではないでしょうか?

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静かに・・・・

ケン

94歳になる父が脳梗塞で倒れて1ヶ月が経ちます2週間ほど救急病院でお世話になり、転院いたしました先の病院で首の後ろの血管から詰まってしまい深い眠...

94歳になる父が脳梗塞で倒れて1ヶ月が経ちます
2週間ほど救急病院でお世話になり、転院いたしました
先の病院で首の後ろの血管から詰まってしまい深い眠りに入っていて2度と目覚めることはないとの診断を
出されました・・今呼吸はしているが2度と目覚めない・・・・
姉弟夫婦で出した結論が積極的な治療はしてほしくないでした
その旨転院先の病院にも伝えたのですが、早々IVHの説明同意書を出されました
皆で断腸の思いで下した事に対して延命を勧める医師、
看護師は家族が分かっていないと苛立ったように医師に連絡を入れていました
94歳目覚めるあてのない父・・医師看護師にとってみたら冷たい家族にしか映らないのでしょうか
今は水分補給のための点滴、熱発時の抗生剤の点滴だけで見守っています
ところが今日見舞いにきた人ににリハビリの先生が積極的な治療をしないと危ないですよと話しかけたと聞き唖然としております。
「あなたたちはおじいちゃんを殺すつもりなの!」と電話が入りました。
ここに守秘義務はないのか・・・と悲しくなりました
明日医師と話し合ってみたいと思いますが・・・

私たちはこのまま静かに見送ってあげたいと思っているのですが冷たい判断なのでしょうか
延命は父が望んでいませんでした。

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医療行為の先を想像できるか否か

はる

一時的に経口からの栄養摂取が出来ない場合、胃ろうや経かん栄養は素晴らしい医療です。しかし、経口摂取の望みもなくまたその訓練ができる人的資源がない...

一時的に経口からの栄養摂取が出来ない場合、胃ろうや経かん栄養は素晴らしい医療です。しかし、経口摂取の望みもなくまたその訓練ができる人的資源がないのであればただの延命です。
医療行為そのものが問題なのではなく、本当はその医療行為によってどう回復していったかという過程が困難なことの原因を検討すべきです。
急性期ばかりに力を入れる制度ゆえ、回復期までを医療機関で行うことは困難です。
医療従事者です。
いつも記事を読んでいますが、いち医師や医療機関ばかり問題視しているようにみえます。
厚生労働省の提示する今後の展開をご存知でしょうか?
急性期医療とは、その先は知らんがとりあえず今すぐの医療的な対応ができます、ということ。
「死」が必ずあることと、別のベクトルなんです。
自分の人生を大事にしたいとお思いなら、是非20代であっても遺書を持ち歩いてください。

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