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質問(1)そもそもうつ病は治るのか

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 Q)講演で例示された患者さんたちは、先生の診察を受けたから「うつ病」と診察されなかったのか? 抗うつ剤が投与されるのはどういうケースか?

 A)精神医学の公式見解としては、診断基準があり、そのうちのいくつかに当てはまればうつ病、という基準があります。だから、私が挙げた渡辺賢さんも、うつ病と診断できる可能性は高いです。ただ、うつ病と診断できることと、抗うつ薬を投与すべきだということとは、別問題です。渡辺さんの場合、明らかに睡眠が足りていないので、よく話を聞いて、何時に寝て何時に起きなさいと指示を出します。もしかしたら、私は、この人には少しよく眠れるタイプの抗うつ薬を出すかもしれません。

井原裕さん(左)に、質問する医療部の佐藤光展記者

 坂本恵さん(仮名)、過呼吸発作の方、この人の場合は、十分な睡眠を取りなさいというだけでしっかり守ってくれそうなので、私はたぶん薬は出しません。田中実さん(仮名)の場合、絶対に薬を出しません。なぜなら毎日酒を飲んでいるからです。まず週3日間、酒を飲まない日を作りなさいと私はおすすめします。毎日酒を飲んでる人に抗うつ薬を出してはいけません。抗うつ薬は酒と一緒に飲んではいけません。精神科の薬物療法は、完全断酒が原則です。この原則を守っていない患者さんも、指導しない医者も多い。大問題だと思います。車乗るなら酒飲むな、薬飲むなら酒飲むな、です。この方のように毎日飲んでいる方には、まず週3日の断酒を1週間、それでも元気にならなかったら、次の1週間は完全断酒です。それでもなおうつなら、薬を出すことを考えます。

 また退職者の中村さん(仮名)の場合、私は薬を出さないと思います。ゴロゴロしているのが問題なので、1日30分ウォーキングしなさいと。あるいは、睡眠時間の指導をするなど、療養指導を通じて元気になれば、薬物は使わないで済むわけです。

 Q)10年うつ病をわずらっていますが、そもそもうつ病は治るのでしょうか。

 A)10年も治らないと治療困難うつ病ということになるが、回復を妨げている要因は何かをチェックする必要があります。睡眠時間は短くないか、長すぎないか、家から出ない不活発ではないか、孤独がもたらすうつは、抗うつ薬だけでは決して治らない。人の心は人の心でしか癒やせない。孤独すぎていないかもチェックポイントです。睡眠時間、酒、運動量、孤独、これらをチェックして、回復を妨げている要因はないか、考えてみる必要があると思います。

 Q)働いていてうつがひどくなり休職、その後復職するなど、社会復帰する場合に、気をつけることは。

 A)どのくらいの期間の休職が適切なのか、はっきりしたデータがあるわけではないが、休職が長いとカムバックする時に不安になりますから、長すぎる休職はよくない。一概には言えませんが、現在、精神科医が患者を休ませる期間は、少しばかり長い気がします。

 Q)そういう場合、復職してきた人に対して、周囲はどうやって接したらいいのか?

 A)カムバックしてすぐの人は、一日8時間フルに頑張り続けるのは難しいので、力を入れて頑張る仕事と、力を抜いてもいい仕事と、そうしたメリハリや優先順位を言ってあげるのは大切だと思います。

 Q)薬に頼り過ぎない治療は、躁うつ病でも可能でしょうか?

 A)双極性障害Ⅰ型、つまり躁うつ病は、非常にシビアな双極性障害なんですが、薬を使わなければまずいな、というケースもあり、そういう人にはきちんと薬を使わなければなりません。問題は、うつ状態プラス軽い躁、これを双極性障害Ⅱ型といいますが、双極Ⅱに関しては重厚な薬物療法が必要か、はっきりしたエビデンスがまだないと言うべきだと思います。私は、薬をあまり使わずに、睡眠相を安定させることが大切だと思っています。しかし、双極性障害Ⅰ型、うつとひどい躁状態、こういう方には薬を使った方がいいと思います。

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