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がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~・コラム

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腫瘍内科って何?

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 東京の虎の門病院で腫瘍内科医をしている高野利実と申します。昨年2~4月に読売新聞夕刊に、「がんの診察室」という小さいコラムを連載させていただいたあと、ヨミドクターでも断続的に文章を載せていました。しばらくお休みをいただいていましたが、今回、またこのような機会をいただくことになりました。週1回のペースで、皆様のもとに文章をお届けしたいと思っております。

 腫瘍内科のこと、がん医療のこと、がんとの向き合い方などについて、私の患者さんのエピソードも織り交ぜながら、考えていくつもりです。今回は、「腫瘍内科って何?」という疑問にお答えします。

 腫瘍内科医は、がんという病気を診る内科医で、主に、抗がん剤治療などの薬物療法を担当します。日本では、主に外科系診療科の医師が、薬物療法を含むがん治療全般を担ってきた歴史がありますが、薬物療法が日々進歩する中で、それを専門に扱う腫瘍内科医の必要性が言われるようになってきました。手術を担うのが「外科」、放射線治療を担うのが「放射線科」、薬物療法を担うのが「腫瘍内科」、という役割分担で、それぞれの専門家が、知識と技術を持ち寄って、密接な連携をとり、チームとして最善の医療を行うのが理想です。

腫瘍内科医の4つの役割

 腫瘍内科医の役割として、次の4つが挙げられます。

(1)薬物療法

(2)支持的治療

(3)臨床研究

(4)がん医療のコーディネート

 (1)の薬物療法は、腫瘍内科医の本来的な役割です。がんを制御するための薬物療法には、抗がん剤治療のほか、最近発展してきた「分子標的治療」や、ホルモン療法などもあります。最先端の情報と、専門家としての知識と、患者さんの価値観に基づいて、最適な薬物療法を選択し、それを安全かつ確実に実施します。

 (2)の支持的治療は、がんそのものを制御するための治療ではありませんが、がんに伴う症状を緩和したり、治療に伴う副作用を軽減したり、がんとともに患っている病気を治療したりすることで、患者さんの全身状態をよりよく保つための治療です。

 (3)の臨床研究というのは、次々と開発される新薬の有効性や安全性を評価したり、現在ある薬物療法のより適切な使用法を確立したりするためのものです。日常の診療で判断に迷うような問題に対して答えを出すために、世界で力を合わせて臨床研究を行っていく必要があります。

 (4)の「がん医療のコーディネート」は、特に重要な役割です。道に迷いがちながんの患者さんにとっての「道案内役」となり、各診療科の医師や看護師や薬剤師など、がん医療の専門家たちが集うチーム医療の「かじ取り役」となることが求められています。

問題はこれから

 腫瘍内科の重要性は少しわかってもらえたのではないかと思いますが、問題は、腫瘍内科医がまだまだ少なく、実際にこの役割を担えていない場合が多いということです。この問題については、次回取り上げたいと思います。

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高野先生コラム_顔120

高野利実(たかの・としみ)
腫瘍内科医。東京生まれの神奈川育ち。1998年東京大学医学部卒。2010年より虎の門病院臨床腫瘍科部長。国立がん研究センター中央病院、東京共済病院などで、抗がん剤治療を専門に手がけてきた。がん薬物療法専門医会代表も務める。

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