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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

少子化対策、しないといけないの?

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八重山鍾乳洞の動物園でいとこのおにいちゃんたちと一緒にヤギを見る娘

 先週、妹の家族と共に八重山諸島に遊びに行ってきました。娘は離島への船旅や水牛車にも興味津々でしたが、何よりもいとこのお兄ちゃんたちにちやほやと相手をしてもらったのがとても嬉しかったようです。普段一緒にいる私よりも甥っ子が笑いかける方がケラケラと笑い、その笑顔に甥っ子たちもノックアウトされているようでした。

 先週は保育園の待機児童問題について書き、いろいろなコメントをいただきました。以前の「中絶禁止で少子化解消?野田聖子氏の発言をめぐって」という記事にも少子化問題について興味深いコメントをたくさんいただいていました。

 「根本的に、少子化は対策をしなければならない問題なのでしょうか? 世界規模でみれば人口は増加の一途。エネルギーも食料も足りません」というご意見をいただきましたが、これは私が以前に抱いていた疑問と同じです。しかし、今では少子化対策はやはり必要だと考えています。理由は二つあります。

急激な人口減少の問題

 一つ目の理由は、少子化対策をしてようやく衰退がゆるやかになるほど、日本の人口は今後急激に減少する可能性が高いと思われるからです。先週、2040年には全都道府県で人口が減少するという国勢調査をもとにした予測が公開されましたが、5年前の予測よりも急激に減少すると修正されていました。

 現在の日本の人口動態を見てみると、第2次ベビーブームの世代がちょうど40歳になるころで、その後の世代は人口が単調減少しています。妊娠可能年齢を40歳過ぎとすれば、妊娠できる女性の人口は今後増えることはないので、何もしなければ出生数はどんどん減って行きます。つまり、出生率を上げるしか、少子高齢化が急激に進むのを阻む手はないと考えられます。急激な高齢化は介護や福祉、医療の負担という面でも経済活動の面でも社会にとって大きな問題です。

厚生労働省ホームページより

 正直なところ、どんな政策を実行しても、妊娠可能年齢の女性の人口がすでに少なくなっているので、移民でも受け入れない限り、長期的に人口が増加していくことはまずないと思っています。人口が先細りすること自体は、限りある地球の資源や食糧は少数の人間で分け合った方が豊かに暮らせると思うので悪いこととは言い切れませんし、他の先進国同様いつか衰退していくのは仕方ないことだと思います。

 しかし、せめて時々政策を見直す余裕が持てる程度にはゆるやかな衰退になるようにするためには、第2次ベビーブーム世代がまだ妊娠可能なうちに(すでに厳しくなって来ていますが)迅速な少子化対策を行うことが必要ではないかなあと考えています。マスメディアや行政の方とお話していると、45歳くらいまでは産めるとのんびり考えておられる方が非常に多いので、もう少しスピード感が欲しいと感じます。

子を願う気持ち 実現しやすく

 二つ目の理由は、子どもを持ちたいという個人の希望がもうすこし実現しやすい世の中になってほしいと思うからです。前回の記事の続きになりますが、人口と仕事が集中している首都圏では保育園が非常に不足していて、保育園が充足している地方では仕事があまりない、そして子どもを産む世代の雇用が不安定だという現状では、子どもを欲しい、もっと欲しいと思っているのに環境に阻まれている人が多いのではないでしょうか。

 子どもを持ちたい人がそれを実現し、子どもを望まない人が「お前みたいなのがいるから少子化が改善しないんだ」と罵られない世の中になるためにも少子化対策は必要だと思います。

 少子化対策は子どもを望む人だけのためではありません。共同体全員のためだという認識で、行政にも本気を出してもらいたいと思っています。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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40件 のコメント

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国の政治改革

ペン君

まず。政治改革をすること。大変なことだが。

まず。政治改革をすること。大変なことだが。

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他者や国のことを考える余裕がない人が多い

くりあ

最近の女性専用車両への反応や、マタニティマークへの反応、マタハラ、ベビーカーへの反応見ていると、なんか身勝手な意見が多いなぁと思います。「子ども...

最近の女性専用車両への反応や、マタニティマークへの反応、マタハラ、ベビーカーへの反応見ていると、
なんか身勝手な意見が多いなぁと思います。

「子どもを産むと女性ばかりが損する、フルタイムで働けなくなるせいで、経済的な立場も弱くなる」

って正直思ってしまいます。

私自身も余裕がないから、なんですけどね。

あと「親の責任」が昔より求められるようになったせいもあると思います。
一世代前の子育てって、かなり奔放でしたよね。

子どもを持つことは慎重にならざるを得ない時代なんだと思います。

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少子化問題じゃない次世代形成機能極貧社会

遊憂悠

少子化対策の生温さ遅さと、ネット上での少子化問題の無理解にあきれています。あなた、社会保険いくら払ってますか?年金は毎年上がる仕組みに成ってます...

少子化対策の生温さ遅さと、ネット上での少子化問題の無理解にあきれています。
あなた、社会保険いくら払ってますか?年金は毎年上がる仕組みに成ってますよね?消費税上がりました?自動車保険あがりますね?社会保障費で国が(つまり我々)がいくら負担しているか分かってますよね?賃金が上がらない人も多くて困ってますよね?消費税が15%になるのを覚悟しているからってこう言った問題がなくなるわけじゃないですよね?労働条件は改善してますか?顧客は増えてますか?
 こう言った全ての根底には、次世代形成(子育てや介護とも言う)の費用や時間の個人負担が多くなっているからです。社会的に解決せざるを得ないと考えていますが、違いますか?

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