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ノートルダム清心学園理事長・渡辺和子さん(5)人生の冬も機嫌よく

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 ――今、年を重ねても活躍してらっしゃる方はたくさんいますが、超高齢社会の中で、高齢者の孤立や自殺も伝えられています。若い人でも老後の心配をする人も。老年期をどんな心持ちで過ごしたらいいのか、アドバイスをお願いします。

 「ふがいなくなってしまった自分をいじめないで、嫌わないで、謙虚に受け止める。謙虚さというのはほんとに大事だと思います。私は高齢期を人生の冬と考えています。そりゃ私も、学生たちを見てたらね、うらやましいなと思うことはあります。ピンヒールをはいてカツカツカツカツ歩いていくし、階段なんかもパパパッと駆け降りて行くのを見ると、ああ私も昔はそうだったと。でも、冬がきた時に、春、夏、秋を懐かしんでばかりいてもしょうがないので、冬だけが持つ静けさや謙虚さ、個性のようなものを大切にして、感謝して笑顔でいること。機嫌よくしていること。機嫌の悪い年寄りはご免被りますよね(笑)。自分がそう思うんだったら、自分がそうならないように気をつける。そりゃ、腰が痛い日とか、足が痛くなったりとか、ありますけど、そのために暗くしても、よくなりませんもの」

 ――春は門出の季節ですが、不本意な状況にある人もいるでしょう。そういう人を勇気づける言葉をいただけませんか。

 「置かれたところで咲きなさい(笑)。うちの大学の卒業生の97%は3月の時点で就職先が決まっていますが、希望と違うところに行く学生も結構いるんですよ。自分よりもできなかった学生が内定をもらって、自分は落ちたとか。落ち込んでおりますよ。そういう学生たちに、落ち込んでいても何も生まれてくるものはないんだから、自分が一番なりたい職業じゃなかったかもしれないし、行きたい会社でなかったかもしれないけど、暗い顔だけはよしなさいって言っています。今、非常に自分にあいそをつかしている学生たちもいると思います。でも、それがなかったら人生でないですもの。何もかもうまくいったら」

 「今しょげている人に言うとしたら、『きっとよくなりますよ』ということでしょうか。非常に無責任だと思いますけれど、きっとよくなりますよ。ただ、そのためには自分が努力しないといけない。手をこまねいて待ってたらよくなると思ったら大間違い。人が幸せにしてくれると思っても大間違い」

 「これはマザー・テレサが来日した時におっしゃったことですけど、『どんなに小さなお仕事でも、その小さなお仕事に大きな愛をこめて行いなさい』と。私は大きな仕事はできないけど、大きな愛をこめることができる。その言葉を学生たちにもよく贈ります。安楽な生活を求めるよりも、強い人になれるよう祈りなさい。自分にふさわしい仕事を求めるよりも、与えられた仕事を果たす力、果たすに必要な力を与えてくださいと祈りなさいと。結局この努力が、置かれたところで咲くのに必要なんですね」

(おわり)

渡辺和子(わたなべ・かずこ)
 1927年生まれ。聖心女子大を経て、上智大大学院修了。ノートルダム修道女会に入り、アメリカ留学後、岡山市のノートルダム清心女子大学長に就任、90年まで27年間務める。現在はノートルダム清心学園理事長。著書「置かれた場所で咲きなさい」(幻冬舎刊)が100万部を超えるベストセラー。
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