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カルテの余白に

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藤井正彦 神戸低侵襲がん医療センター院長(下)総合的チーム医療めざす

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 外科手術や放射線治療、抗がん剤による化学療法など、がんの治療手段は多岐にわたる。4月にオープンする神戸低侵襲がん医療センターは、放射線科や腫瘍内科などに25人の医師を配し、外科手術以外の治療を行う。院長の藤井正彦さん(55)は、「一人の患者を総合的に診るチーム医療を実現させたい」という。

緩和病床の部屋に面した庭には遊歩道を備えた。「高度な治療を受けつつ、憩いの時間を持ってもらいたい」と話す藤井さん(神戸市中央区の神戸低侵襲がん医療センターで)

 

様々な患者診る

 <30年前、神戸大病院で放射線科の医師としてスタートした。当時、がんを治療する科は、主に放射線科と外科だった>

 放射線診断という専門分野だけで良いという時代ではなく、カテーテルを使った治療など、外科以外のがん治療にも加わっていました。今は腫瘍内科が行う化学療法も10年以上は担当していました。

 その頃の患者の中に、肝臓がんの高齢男性がいました。抗がん剤を投与するためのカテーテル治療を繰り返しましたが、持病の肝硬変の進行が早く、肝不全で亡くなりました。家族は病室で泣かれましたが、その後、「手を尽くして頂いて、ありがとうございました」と感謝されました。

 放射線の診断だけでなく、ベッドサイドの近くで様々な患者の治療にあたり、最期を看取(みと)ってきたことは、がん治療を総合的に担うセンターの長となる今、貴重な経験だったと思います。

死見届ける経験

 <だから、医療施設の機能分化が進むことに、弊害を感じる時もある>

 大規模病院が主に、急性期の医療を担当するようになり、患者はその後、転院するケースが増えました。例えば大学病院では、死亡診断書を書かないまま、研修医期間を終える若手医師もいます。

 しかし、患者の死に立ち会い、その後、遺族に感謝されたり、逆に遺体の解剖を断られたりするという場面は、若いうちに経験すべきです。がんを診る医師は、特にそうです。患者や家族に最期まで納得してもらえる医療を提供できたかどうかを知るには、患者の死をしっかり見届けることが欠かせません。

 <センターでは、末期がんの患者も受け入れる>

 ベッド数は80床ですが、10~20床を終末期患者の緩和病床として確保しています。がんが脳や脊椎などに転移した難しい症例でも、放射線治療の精度が高ければ、腫れを抑えるなどして症状をかなり緩和できます。生活の質を保ちつつ、より良く生きることが可能になるのです。

他病院とも連携

 <神戸市が進める医療産業都市構想で、センターは医療施設が集まる一角に建つ>

 近くには神戸市立医療センター中央市民病院や、再生治療などを行う先端医療センター病院など設備の整った病院があります。こうした病院と互いに患者を紹介し合うような連携の準備をしています。

 患者の生活の質を考え、社会的な立場や家族関係なども頭に入れて、治療方針を考えていきます。がん患者やその家族にとって、いつでも頼ってもらえる施設の一つになりたいと思っています。(聞き手 新井清美)

 (「カルテの余白に」は、今回で終了します)

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