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ノートルダム清心学園理事長・渡辺和子さん(1)「置かれた場所で咲きなさい」

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 著書「置かれた場所で咲きなさい」(幻冬舎刊)が100万部を超えるベストセラーとなったノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さん。数々の困難を乗り越えてきた、実体験に基づく言葉は、多くの人の胸を打つ。シスター渡辺に、今ある所で努力し、花開く生き方について聞いた。(高梨ゆき子)

渡辺和子(わたなべ・かずこ)
 1927年生まれ。聖心女子大を経て、上智大大学院修了。ノートルダム修道女会に入り、アメリカ留学後、岡山市のノートルダム清心女子大学長に就任、90年まで27年間務める。現在はノートルダム清心学園理事長。

 ――著書「置かれた場所で咲きなさい」(幻冬舎刊)が100万部を突破しました。これだけ多くの方が手に取った理由について、ご自身はどう思われますか。

 「お値段(1000円)もあるでしょうし、本の大きさもあるでしょうし、表紙のたんぽぽの絵がよかったと言う方もいらっしゃいます(笑)。私は幻冬舎さんが上手に編集なさったと思います。書きためたものをお渡ししただけなんですけれども。私自身は3000部くらい売れればいいかしら、くらいに思っておりました」

 ――これだけの方に読まれているということは、反響も大きいと思いますが、読者からはどんな反応があったでしょうか。

 「やはり一つには、今落ち込んでいる方がたくさん書いてくださっていて、その中には、励まされたとか、不安に思っているけれども少しそれがやわらいだとか、それから、人生相談が多いですね。私の手に余る内容のもの以外は、ほとんどはがきで返事をしています」

 ――そういった反響をごらんになっての感想はいかがですか。

 「一般的にいって、どうしたらいいんですかとか、シスター、どう思われますかっていう質問が多いですね。私はこういうことをして乗り越えようと思いますっていうのは少ないです。だから、もしかすると、題名が『置かれた場所で咲きなさい』と、ある意味ではっきりしていることに引かれた方が多いのかもしれません。『咲いたらどうですか』とか『咲くこともできますよ』っていうのでなく、『咲きなさい』っていうのが。タイトルは、編集の方に、何かいいのありますかと聞かれて、私の好きな詩の言葉で、『置かれたところで咲く』というのを挙げましたら、最終的に『置かれた場所で咲きなさい』というものになったのです。それがもしかしたら、アトラクティブ(魅力的)だったのかもしれません」

 ――だれかに強く導いてほしいという感じでしょうか。

 「まわりが咲かせてくれると思ってたとか、まわりがよくなったら咲けると思ってたとか、そういう気持ちでいた方が、まわりがどうであろうと、とにかく置かれたところを居場所として、そこでお咲きなさいという強い言葉に引かれたのでしょうか。咲くということは、仕方がないとあきらめるということではなくて、笑顔で生き、まわりの人も明るくして、神様がそこにお植えになったことは間違いではなかったことを示しながら生きることなのです」

 ――そういう生き方に、多くの人が共感しました。

 「東京育ちの私は、岡山に来て36歳で3代目の学長となり、苦労しました。シスターの中で一番若く、その大学の卒業生でもないし、岡山という土地にも初めて来た人間でした。学長は初代も2代目も70代のアメリカ人。それに、当時すでに、ここの大学には、それまでの学長を補佐してきた50代のアメリカ人シスターがいらしたんですね。その方が3代目におなりになると思っていたのに、私がよそから来て横取りしたようにお感じになった人もいたかもしれません。そのようなこともあって、風当たりはございました」

 「ただ、学生は喜びました。初めて日本人が学長になったということと、若かったからお姉さんみたいな感じだったんでしょう。でも、大学ではトップで、修道院に帰れば一番のボトムだった私には、役割葛藤(注・複数の役割の中でどの役割に対する期待に応えるべきかジレンマに陥ること)がありました」

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