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楽ラク介護術

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(49)心の中は花まっさかり

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 この連載を始めてから、多くの方に「勇気が出た」「介護に対する考えが変わった」と声をかけていただきました。少しでも介護を明るく楽しいものに、という私の思いが伝わったのだと、本当にうれしいです。

 私の担当は今回が最後。それを書くにあたり二十数年前に出会ったおじいさんのことが頭に浮かびました。この業界に入って最初の実習施設で会いました。

 骨折の手術後で、一日中目を閉じてベッドに寝ていました。私は決められた時間に部屋に行き、指導された通り、「おむつ交換の時間です」「食事の時間です」のどちらかの言葉をかけました。うなずくだけの反応に、言葉を話せないのだと思い込んでいました。

 数か月後、次の実習施設に行くと、車椅子を自分でこいでいるおじいさんに、「久しぶりだね」と声をかけられました。誰かと勘違いしているのだろうと思っていると、庭に誘われました。そこは高速道路が見える丘。「ここに来て元気になった。前の施設ではみんな忙しそうで、声もかけられなかった」。その言葉に、ようやくあのおじいさんだと気づいたのです。

 「車が趣味で一日中見ても飽きない」と、高速道路を走る車を数えるおじいさんの目は、少年のように輝いていました。私はただ一方的に決まった言葉をかけるだけで、その人を知ろうとしていなかった。そう思い至りました。

 施設の玄関に、おじいさんの気持ちを示すような一文が掲示されていました。

 わが姿 たとえ(おきな)と見ゆるとも 心はいつも花の真盛り

 この短歌こそが、私の介護の出発点なのです。人はいつまでも青春を生きられる。老いも若きも心は同じなのだと。(青山幸広、介護アドバイザー)

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