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[大震災2年]ケア型仮設 効果は上々

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 東日本大震災の後、岩手県釜石市に作られた高齢者らのケアを重視した仮設住宅で、孤立や不安の解消に一定の効果があったことがわかった。今後の復興や災害にどう生かすか。これまでの取り組みと課題を報告する。

励まし合い 前向きに

高齢者の見回り活動を行うサポートセンターの職員(左)。デッキが玄関との段差をなくし、行き来がしやすい

 「ここの仲間と『仮設を出るまで元気でがんばろう』って励まし合ってます」

 釜石市の市街地から車で十数分。高台の運動公園に作られた平田第6仮設住宅で、高橋フヂさん(77)が話す。自宅を津波で失い、約240世帯が入る同仮設に一人で移ってきた時は、不安が強かったという。

 高橋さんが住むのは、同仮設のなかで、高齢者や障害者向けに設計された区画(60世帯)だ。住戸を木製デッキがつなぎ、玄関口に段差がないため、車イスでも出入りや移動がしやすい。玄関が向き合い、デッキ上には屋根があるため、住民が井戸端会議をしやすい。

 同仮設は、2011年8月、高齢者の見守りや子育て支援などを行う拠点を備えた「コミュニティケア型仮設」として開設された。近隣関係が育みやすい環境で、高橋さんも、「しばらく見ない人がいたら、様子を見に行きます」と言う。

 ケア型仮設は、東京大学の高齢社会総合研究機構が釜石市に提案し、市との協力で作られた。阪神大震災後に仮設住宅で孤独死が相次いだ反省から、交流や助け合いを促す仕掛けを施した。町の再興や、災害時の仮設運営のモデルにしようとの狙いがあった。

 市によると、デッキや屋根がある区画は、通常の仮設住宅より一戸当たり50万円近く割高だが、工事全体で工夫し、国が定める費用の範囲で収まったという。

 この仮設には、週3日開設される診療所や介護福祉士らが常駐する「サポートセンター」などがあり、必要なケアを提供している。

 センターを運営する介護大手「ジャパンケアサービス」は、デイサービスなどの介護保険の事業も実施。職員を24時間常駐させ、朝夕に各戸を見回るほか、健康教室を開き、買い物代行や配食サービスも行う。

 これまでに、見回りの職員が脳出血で起きられない高齢者を見つけたり、自殺を未然に食い止めたりしたことがあった。地元の自治会や福祉関係者らも定期的な情報交換で協力。ふさぎ込み、引きこもる人を発見し、支援を提供してきた。

 センター長の上野孝子さん(55)は、「買い物代行に頼っていた人が自分で行けるようになった。適切な支援があれば前向きになれるとわかった」と振り返る。

 同市地域医療担当部長で医師の高橋昌克さんは、ケア型仮設では、他の仮設より救急搬送される人が少ないことがわかったと言う。「安心感があるため、軽症でも不安になって救急車を呼ぶ人が少ない。医師不足が深刻な地方には、高齢化への対応のヒントになる」

 全国からの応援もあり、住民の交流促進や孤立解消に成果を見せたケア型仮設だが、今後どう生かしていくかには課題がある。

 高橋医師や東大関係者も参加した同市の「地域包括ケアを考える懇話会」は先月、復興住宅建設に向け、〈1〉自治会や医療、福祉関係者らの協議会〈2〉住民の「たまり場」〈3〉サポートセンターなどが必要との提言をまとめた。

 同市は、約1000戸に上る復興住宅に見守りの仕組みを導入する考えだ。ただ、財政難や介護人材不足の自治体では難しさが残る。東大の小泉秀樹准教授は、「行政が直営ですべてを行うのは困難だ。住民が自主的活動として行っていける工夫が必要だ」と話す。(小山孝、写真も)

特徴と狙い
・各戸の玄関の段差をデッキで解消(移動支援)
・屋根があり雨でも行き来が容易(引きこもり防止)
・デッキで井戸端会議も(交流の促進)
サポートセンター
 仮設住宅に併設し、生活相談や地域交流、子育て支援などを行う拠点。2011年から運営費は国が全額負担し、岩手、宮城、福島県に計114か所(2月1日現在)ある。
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