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最新医療~夕刊からだ面より

医療・健康・介護のニュース・解説

若い人にも 脳出血や脳梗塞…生まれつき 血管に要因

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 脳卒中というと中高年の病気と思われがちだが、アナウンサーの大橋未歩さん(34)(脳梗塞)やミュージシャンの星野源さん(32)(くも膜下出血)らの発症が報じられ、若い人にも起きる例が注目されている。

 

 「若年性脳卒中」に明確な定義はないが、おおむね40~50歳以下で発症した場合を指す。全国18施設での研究(SASSY―JAPAN)では、50歳以下は8・9%、45歳以下は4・2%だった。50歳を超えると脳梗塞が6割と多いが、若年者の場合は脳出血やくも膜下出血が多いのが特徴だ。

 日本医大神経内科の片山泰朗(やすお)教授によると、高血圧や糖尿病、脂質異常症など動脈硬化につながる生活習慣病が引き金になる中高年に対し、若年者は「生まれつきの要因が背景にあることが多い」という。治療法は若年者も変わらない。

 若年性の脳出血は、脳静脈がとぐろ状の脳静脈奇形、血管の塊ができる海綿状血管腫や、脳動脈が詰まって細い血管がたくさん生じる「もやもや病」などの病気があることが多い。血管がもろいため、運動やトイレでいきむなどの血圧が上昇する行動をきっかけに発症しやすくなる。

 動脈(りゅう)が破裂するくも膜下出血では、家族内で起きることが多い「家族性動脈瘤」のことがよくある。家族で経験者がいたら注意が必要だ。

 脳梗塞では、血液が固まりやすくなる血液凝固異常症や抗リン脂質抗体症候群が背景にあることが多い。炎天下やサウナ、激しい運動などで、血液中の水分が奪われると発症しやすくなる。

 心臓の穴が大人になっても塞がらない卵円孔開存などが原因で、脳に送られた血栓が詰まる奇異性脳塞栓症、脳の静脈や、静脈が集まったところ(静脈洞)に血栓ができる脳静脈・静脈洞血栓症も多い。妊娠やピルの長期服用も危険を高める。

 また、脳梗塞やくも膜下出血につながるものとして注目されるのが脳動脈解離だ。脳動脈の膜が割けて膜内に血液が流れ込み、血管が圧迫され、血流が滞ったり動脈瘤ができたりする。

 急に首をひねる運動でも誘発され、整体やゴルフ、野球なども引き金となる。肩こりで首をぼきぼき鳴らす動きも危険だ。首の後ろの動脈がズキンズキンと激しく痛むのが典型的な症状で、早めの対処で脳梗塞などの発症を予防できる。

 若年性脳卒中の予防は、一般的には水分をよく取り、生活習慣病にならないようにし、たばこは吸わないことが大切だ。原因となる病気は、磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影法(CT)などの検査でわかる。「家族に発症者が多いなどの不安材料があれば、検査を受けて、原因となる病気の治療や生活習慣の改善など予防策をとることができる」と片山教授は話す。(岩永直子)

脳卒中

 脳の血管が詰まる「脳梗塞」、細い動脈が破れて出血する「脳出血」、動脈の(こぶ)が破裂して脳表面に出血する「くも膜下出血」の総称。患者の割合は脳梗塞が7割、脳出血が2割、くも膜下出血が1割で、発症のピークは60~70歳。年間12万人以上が亡くなり、日本人の死因では、がん、心臓病、肺炎に次いで多い。

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