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海原純子のハート通信

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ネットいじめ研究――傍観者がいじめを助長する

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 心理学者で東北大学大学院元教授の仁平義明先生から興味深い論文があるとうかがいました。いわゆる「ネットいじめ」についての介入試験による研究論文です。今週はこの研究を紹介しましょう。

 ウィスコンシン大学の心理学者フライスたちはフェイスブックを使用した実験を行い、ネットチャットの「いじめ」に被験者がどう反応するかを調査しました。それによると参加者の43・8%の人がチャット中のどの時点かで、いじめをパスして見て見ぬふりをし、半数の人は話題を変えることでいじめをそらそうとし、15・6%の人はいじめられている人をなぐさめたということです。同じ人が複数回答していますから合計は100%を超えています。

 しかし、いじめをしている人に対し、直接、「やめるように」「いじめだ」と指摘する人はわずか3・2%でした。そして共感性が高い人は、共感性が高い人ほど話題を変えることで、いじめをそらそうとしていましたが、それが共感性の高い人の限界で、これも形を変えた傍観者であると述べています。

 仁平先生によると、いじめは相手を孤立させ、集団から切り離して攻撃する方法で、孤立させた一人をたった一人にするまで追い込み、パワーの差を大きくする点が特徴だと指摘している。こうしたいじめの際、共感性があり、優しい人はいじめの傍観者となりやすく、傍観者になることがいじめ側のパワーを大きくして結局はいじめを助長するという。

 いじめ対策の基本は傍観者が一歩踏み出し、いじめられている人を守る態度を明らかにすることが大切だ。パワーの差を大きくさせないために、はっきりと守る姿勢を打ち出す態度や、「いじめ」を「いじめだ」と指摘する動きで、いじめ側のパワーを小さくさせることが不可欠なのである。

 ところで、こうしたSNS(ソーシャルネットワーク)に関する研究、日本のマスコミは関心が薄いですね。これだけ使用頻度が高いツイッターやフェイスブックの利点や問題点についての報道が後回しにされたり、敬遠されたりする傾向が高いことを最近、つくづく残念に感じています。

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海原純子ブログ_顔87

海原 純子(うみはら じゅんこ)

1976年東京慈恵会医科大学卒業。日本医科大学特任教授。医学博士。2008-2010年、ハーバード大学及びDana-Farber研究所・客員研究員。現在はハーバード大学ヘルスコミュニケーション研究室と連携をとりながら研究活動を行っている。

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1件 のコメント

実験と現実のちがい、安全かどうか

相手がプロの時は怖かったですよ

チャットでいじめ。たった一人でやっていたら、すぐに誰でも経験できるのでは。一人住まいの高齢者などは苦労していらっしゃっているでしょう。側にだれか...

チャットでいじめ。
たった一人でやっていたら、すぐに誰でも経験できるのでは。
一人住まいの高齢者などは苦労していらっしゃっているでしょう。
側にだれかいれば、対応を指示できるからいいですよ。
おれおれ詐欺なんかは、こう言ったら?とか指示できます。

チャットの場合はチャットを複数ひらいてやっていると、結構防止できるのでは?
孤独どころか、話の内容を覚えてりるのも一苦労ですから。
いじめられている事すら気がつかないという現象が起こります。
相談できるんです。これって何だろうって。

一人が判断して対応するには限界がすぐくるから大変です。
でもチャットをしていて、また他からチャットが入ると何故か孤独感が薄れていきます。
対応に忙しいという状態が孤独を感じる暇をつくらせないからじゃないでしょうか。

音楽をききながら、動画をみながらチャットでもかなりいいのではと思います。
気をそらしながら、時にチャットに集中。
チャットだけに集中しては大変です。

それと今回は実験でしょうから、安全です。
実生活上で
相手がなんらかの確信犯なら、すごいです。
おどしてきますから。相手はプロです。
封書、はがき、ネット、そのほかの媒体でも同じでしょう。
すぐに専門家へ相談です。

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