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(47)仏壇に線香 戻った笑顔

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 寝たきりや認知症になると、お墓参りの足も遠のき、自宅の仏壇に手を合わせることさえなくなってしまいがちです。家族は生活のための介護に追われ、そこまで手が回らないのが普通です。でも、長年続けてきた生活習慣を失うことは、本人にとって生きる意欲にかかわる大きな問題です。

 ツネさん(91歳、仮名)は5年前から寝たきりです。同居していた長男の体力が衰えたため、2年前に施設に入所しました。

 ツネさんは、いつも目を閉じたままで表情がなく、長男が来ても無反応。長男もスタッフも、ツネさんに笑顔を取り戻してほしくて、声をかけ続け、好きな音楽を流すなど工夫しました。日当たりのいい場所が好きと聞き、お日様を追いかけるように座る場所を移動。それでも、ツネさんは目を開きません。

 2、3か月すると、長男もあきらめて、面会もめっきり減りました。このままではいけないと、短時間でも自宅に戻ることを提案。「どうせ何もわからない」と言う長男を説得して帰宅しました。近所の人も顔を出してくれましたが、やはりツネさんは無反応です。

 ところが、です。仏間に入って仏壇のロウソクに火をつけ、線香を立てて、前に置いたいすにツネさんを座らせると、その手がかすかに動き、目からスーッと一筋の涙がこぼれたのです。「会いたかったんだね。元気なころは毎日、仏壇の前に長いこと座ってたな」。ずっと開かずの間だったらしいカビ臭い仏間で、長男は声を震わせました。

 以後、長男の協力で、時折帰宅して、仏壇に手を合わせるようになったツネさん。施設でも目を開き、うっすらと笑顔を見せてくれるようになりました。(青山幸広、介護アドバイザー)

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