文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

わいず倶楽部

介護・シニア

「桜葬」墓地を訪ねる…願わくは 花の下にて―

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
山崎さん(右)から桜葬の説明を受けて、「心地よい公園みたいね」と話し合う(左から)中井さんと堀さん(大阪府高槻市原で)

 墓石の代わりに桜の木を墓標とし、その下で眠るのが「桜葬」だ。生前に取り決めれば、自分が死を迎えた時、スタッフが喪主も務めてくれる。そんな会員制の「桜葬」墓地が大阪府高槻市原に設けられ、シニア世代の関心を集めている。2人の女性が現地を訪ね、組織運営を担うNPO法人エンディングセンターのメンバーと<新しい永眠のかたち>を語り合った。

 探検隊員は同市の中井千賀子さん(69)と神戸市灘区の堀長子(のぶこ)さん(69)で、親友同士だ。2人は桜葬墓地のそばの同センター関西事務所で井上治代理事長(東洋大教授)らと会った。

 「普通のお墓とはどう違うの」と興味を抱く2人に、井上さんが「まず自然志向であることです」と説き始めた。

古来愛される木

 墓地は、山あいの土地(約2000平方メートル)を芝生敷きの公園のように整備し、ソメイヨシノやヤマザクラなど15本を植樹。1本を複数で共有する。1区画25センチ四方で、穴を掘り、お骨を埋めて土にかえす。現在、約450区画を受け付け中で、区画の境となる柵などはない。墓地全体を6ゾーンに分けて、縁石にふった番号などで、誰がどの辺りに葬られたかわかるようになっていて、共用の献花台や銘板もある。宗派は問わない。

春には桜の花が咲き、華やぎをもたらす。手前左の扇形の盛り上がった所が埋葬用地(2012年4月)=エンディングセンター提供

 「なぜ桜ですか」と堀さん。井上さんは「日本で古来愛され、入学式など人生の節目を見届ける木だからです」と答えた。

 「桜の下、皆で眠るイメージを住宅に例えれば?」。そんな井上さんの問いかけに、中井さんが「一戸建てでなく、マンションみたい」と応じると、井上さんは「そこが大切です」と続けた。

 一戸建ては後継ぎがいないと荒廃する。マンションはそうしたことと関係なく、建物全体が管理され、存続していく。この墓地も同センターにより管理され、美しく保たれる。毎年春には、会員らが集って死者たちのためにメモリアル行事を開く。

 「高齢夫婦だが、子がいない。あるいは、独身で生きてきた。お墓の継承者がいなくても、会員の輪に入れば、ここで無縁にならずに永眠できるのです」

 会員が亡くなった時、生前契約に基づき、葬儀や納骨などを行ったり、遺族を手伝ったりする仕組みもある。堀さんが「私の妹夫婦にも子どもがいない。社会の切実な問題への、一つの答えですね」と納得していた。

墓が結ぶ縁

桜葬に関心を持つ理由

▽お墓の継承で子どもに負担をかけたくない
▽夫と別れて独り。静かな永眠の場がほしい
▽地元の寺とのつきあいが煩わしい
▽桜が大好きだから
▽子がなく、石で立派なものを建てる気になれなくて
▽家制度も檀家制度もいや。さりげなく土になりたい


(NPO法人エンディングセンターによる)

 同センター職員、山崎周亮さん(35)の案内で、桜葬墓地を見学した。冬場に寂しくないよう、常緑樹も植えられている。周囲に山林が広がり、遠くに高槻市街地が望める。堀さんが「立地がよく、癒やされる空間。すでに埋葬されたのは?」と尋ねた。山崎さんは「昨年1月に開いて以来、9家族が行いました。お墓を引っ越してくる『改葬』もあります」と答えた。関西事務所では、会員登録したのは約100人。先行して2005年に同センターが桜葬墓地を設けた首都圏では、会員が2000人を超えた。

 同センターでは毎月、お墓や供養に関する講演会や遺影撮影会などを催している。「催しの後、懇親会も開き、会員は絆を深めます」と言う山崎さんに、2人は「お墓が結ぶ縁ね」とうなずいていた。

 中井さんは「土にかえるという考えが、いいと思った。こんな葬られ方もあると初めて知りました」と言い、堀さんも「桜葬のような選択肢もあると妹に教えたい」と話していた。(文・渡辺達治、写真・大西健次)

樹木葬 他施設でも

 「桜葬」は木を墓標とする樹木葬の一つで、NPO法人エンディングセンター(関西事務所=072・669・9131)が商標登録している。年会費5000円。区画購入は1人40万円。区画を持たずに会員になり、催しや行事に参加するのも可能だ。

 法律上、宗教法人や行政などしか霊園が持てないため、高槻市の桜葬墓地も、趣旨に賛同した「神峯山寺」の土地にある。墓地の設計や会員組織運営などは、同センターが自由に行う。

 関西で樹木葬ができるのは▽大阪府池田市、北摂池田メモリアルパーク内「(なごみ)の碑 さくら」(霊園・墓石のヤシロ=0120・140・846▽京都市右京区、西寿寺(075・462・4851)▽神戸市北区、神戸聖地霊園内「永代供養『さくら』」(メモリアルアートの大野屋=078・594・0111)などがある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

わいず倶楽部の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事