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医療部発

コラム

マインドフルネス・ワークショップ体験記(4)

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ゾンビの群れに加わった!

自宅の部屋で歩行瞑想をする私。畳ベッドの1・8メートルほどの距離を往復します。
両手は曹洞宗のように前に組んでいますが、普通にダランと下げたり後ろで組んだりもします。

 3日間のワークショップでは、「歩行瞑想」も数多く行いました。

 文字通り、歩きながらの瞑想。大広間の中は坐蒲やヨガマットがびっしりと敷き詰められているので、大広間を取り囲む廊下で行いました。

 廊下を歩く、と言っても、普通に歩くのではありません。

 歩きながら、歩くことに意識を集中させます。ジョン・カバットジン博士は、「意識を向ける対象は、足の裏でも、下半身全体でも、体全体でもかまわない」と説明しました。

 意識して歩くので、当然、普段歩くよりスピードはかなりゆっくりになります。国会の「牛歩戦術」並み、というと大げさですが、そのぐらい不自然に遅いスピード。スローモーションと言ってもいいでしょう。

 参加者の数が多いので、廊下の通常の動線に沿って歩くのではなく、動線に対して直角に歩きます。たとえて言うと、小学校の教室の出入り口を出て廊下の窓までを歩くような感じ。距離は人によって違いますが、おおむね3~4メートルでしょうか。その短い距離を1分以上かけてゆっくりと歩き、端まで来たらUターンしてまた歩く。この往復を20~40分ぐらいの間(測っていないので不明)、ひたすら繰り返すのです。

 私は、足の裏に意識を集中して歩きました。

 右足の裏が床から離れて宙に浮く。左足に完全に重心がかかる。右足が前へ動く。右足のかかとが床につき、重心がかかとから土踏まず、爪先へと移動する。左足の裏が床から離れて宙に浮く…。

 こうした一連の感覚を、詳細に味わおうとしました。

 でも、静坐瞑想の時と同じく、やはり雑念は湧いてきます。そのたびに、意識を足裏に引き戻します。驚いたことに、睡魔にまで襲われます。一応、体を動かしているので、静坐瞑想の時ほどではないのですが、眠気のせいでぼ~っとした感覚に陥ることが数回ありました。

 2日目は、ジョン・カバットジン博士の指示に従い、足裏など細かい感覚にとらわれず、「ただ歩く」ことを心がけました。そして、体の内部だけでなく、外部から入ってくる情報もそのまま受け止めようと考え、歩きました。

 歩いている。ただ、歩いている。

 呼吸をしている。ただ、呼吸をしている。

 歩いて壁に近づくにつれて、壁の模様が徐々にはっきり見えてくる。

 階段からふいてくる風が皮膚をなで、少しひんやりするのを感じる。

 総持寺の僧侶が小声で電話をかけているのが聞こえる。

 ワークショップの期間中、忙しく動き回っている実行委員の人たちも、歩行瞑想に加わっているのが見える。

 他の大勢の参加者たちが、狭い廊下をそれぞれの歩き方でゆっくり歩いているのが見える。まるで墓場からよみがえったゾンビの群れみたい(笑)。

 …と、ゾンビを連想して「おもしろい」と感じている自分に気づく。そうした感情をすぐに手放し、また歩くことに意識を向ける。

 さて、「ヨーガ瞑想」と「ボディースキャン」については、ごく簡単に説明しましょう。なにしろ、3日間のワークショップで1回ずつしか行っていないので、記憶が薄いのです。

 ヨーガ瞑想は、ヨガのポーズ(「アーサナ」と呼びます)を、意識を集中して行います。ヨガのポーズは、日常生活では行わない姿勢が少なくありません。だから、普段使わない筋肉を使います。ポーズの完成形へ向けて体をゆっくり曲げたり伸ばしたりしていくと、あるポイントで筋肉のこわばりや痛みを感じます。そのこわばりや痛みにも、しっかり注意を向けるのです。

 私の場合、あおむけになって足を組み、両手でその足をつかんで自分の胸の方に近づけるポーズの時、右ももの裏が痛みました(1年ほど前から、前屈をすると痛みます)。

 静かに呼吸をしながら、足をゆっくり、徐々に胸に近づけていきます。ももの裏の筋(すじ)が伸びるのを感じます。あるところまで近づくと、ピリッと痛みが生じます。

 「痛い…」。その痛みに意識を集中します。

 もっと近づけます。痛みが強くなる。それでも近づけます。痛みがさらに強くなる。それを感じます。

 「これ以上は無理」「もうやめたい」。そんな思いも、そのまま観察します。

 次はボディースキャンです。あおむけに寝て行います。

 ゆっくりと呼吸しながら、足、もも、骨盤、腹、胸、背中、手のひら、前腕、上腕、肩、首、顔、頭など、順番に体のパーツに意識を向け、身体感覚に気づきます。

 私にはこれがけっこう難しかった。呼吸に伴って動く腹や胸は比較的意識しやすいのですが、寝ている時の手足や肩、顔などの感覚については、意識を向けるのが精いっぱい。感覚に十分に気づくことはできませんでした。

 横たわって静かに行うので、眠気も襲ってきます。私は何とか持ちこたえましたが、会場からは大きないびきの「二重奏」が聞こえていました。少なくとも2人は爆睡していたようです(笑)。

 静坐瞑想、歩行瞑想、ヨーガ瞑想、ボディースキャンと、ここまで説明してきましたが、「こんな瞑想をして何の役に立つの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょうね。

次回、その「効能」について書きたいと思います。

つづく

山口博弥(やまぐち・ひろや)
1997年から医療情報部。胃がん、小児医療制度、高齢者の健康、心のケアなどを取材してきた。自称・武道家。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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