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高橋裕子 奈良女子大教授(下)喫煙できない環境作り急務

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 禁煙治療の先駆者である奈良女子大教授で医師の高橋裕子さん(58)は、喫煙を「嗜好(しこう)」ではなく、ニコチン依存という「病」ととらえている。

 子供のニコチン依存も例外ではない。禁煙外来などでの治療経験から「大人から子供まで喫煙しない環境づくりが大切だ」と説き続けている。

「喫煙のきっかけを防ぐため、大学など学校施設の敷地内禁煙を進めるべきだ」と話す高橋さん(京都市伏見区の国立京都医療センターで)=川崎公太撮影

 

小学生の禁煙成功

 〈奈良県の大和高田市立病院で、禁煙外来を開設してから2年後の1996年、思いがけない患者が現れた。小学6年の女児。祖母に伴われたあどけない顔が、泣き顔になって訴えた。「たばこを吸ってしまうので、修学旅行に行けないんです」〉

 典型的なおばあちゃん子でした。おばあちゃんが、おいしそうにたばこを吸うので、ついマネをして吸ったら、あっという間にやめられなくなったというのです。

 初めて吸ったのは、受診のわずか2週間前。子供は大人に比べ、ニコチンを受け入れる脳の回路が作られやすいと考えられています。外国ではすでに知られていましたが、本当に驚きました。

 〈祖母が禁煙し、女児も吸いたくなったら氷水を飲むといった認知行動療法で禁煙に成功、修学旅行にも行けた。この治療を通じ「たばこを吸う子供には、ニコチン依存が少なくない」と確信した〉

 子供の喫煙の入り口の一つとして、非行があるのかも知れません。でも、やめられなくなったら病気なのだから治療しなくては。単に怒ったり、反省を求めたりするだけではなく、禁煙には「医療」が必要という考えを、全国に広めたいと思いました。

 その前提として学校など公共施設の敷地内を全面禁煙にし、大人が一切吸わないことです。吸うきっかけを作らないような環境を整備していくべきです。

依存が強い女性も

 〈日本たばこ産業の調べでは、2012年の喫煙率は、成人男性が32・7%、成人女性は10・4%だ。女性のうち、1日あたりの喫煙量は少ないのに、ニコチン依存になるケースも多い〉

 禁煙外来の女性患者には、1日にたばこ1本とか3本の人もいます。仕事をしている間や、家族が家にいる時は吸わないというタイプです。

 こうした人の方が、むしろニコチン依存が強まる傾向があります。我慢し、たまに吸うので、本当においしく感じてしまうのです。本数が少なくてもやめにくい患者がいるということは医療者間で共有しておきたい知識です。

 既婚女性の場合、夫が喫煙者であるケースが多いです。喫煙者と生活しながら禁煙に挑戦するのは大変です。ぜひ夫婦で、一緒に禁煙を始めてください。

大学デビュー防げ

 〈全国の大学で保健業務を担当する職員を対象にした講演会などを通じ、大学生の喫煙を減らす取り組みも続けている〉

 調査してみると、国立大の学生の喫煙率は、男女とも入学時は1%未満です。しかし、4年生になると、女子は大きな増加はありませんが、男子は20%にも跳ね上がります。やはり大学の敷地内に喫煙場所があるなど、環境の問題でしょう。教室に灰皿があった昔よりは改善されていますが、大学の禁煙は、現在進行形の課題です。(聞き手 原田信彦)

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