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[精神科医が語る認知症](11)「宅配医療」が在宅支える

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 「86歳の父親を精神科病院に入院させてほしい」

 昨年8月、私が勤務する病院に来た息子さんが申し出ました。

 ご本人は、7、8年前から軽い脳梗塞を繰り返しています。体のまひはありませんが、1年前から認知症の症状が出始めました。

 日中は穏やかですが、昨年7月過ぎから毎晩、徘徊(はいかい)をするようになり、「自分は死ぬから」と大声を出し、畳やベッドをずっとたたくようになったのです。

 息子さんの申し出があったため、近隣の精神科病院あての紹介状を作成することにしました。その時、息子さんは待合室の壁に貼ってあった当院を紹介する新聞記事を読みました。精神科医が認知症の人を訪問して診療することで、精神科への入院を防ぐという内容で、「先生の考えがわかりました。入院はやめて、一緒に生活しようと思います」と言われたのです。

 「入院はさせない」と決めたものの、夜間に大声を出したりする状態はいつまで続くかわからず、家族介護は限界に見えました。そこで、特別養護老人ホームにショートステイを依頼し、私が往診して精神科の治療をすることにしました。

 数日は夜間の興奮が続きましたが、職員がしっかりしており、介護の心配はありません。しばらくすると落ち着き、今は自宅で穏やかに過ごされています。

 認知症の人への社会的な支援が不十分なため、暴言や徘徊などの行動・心理症状が激しくなり、在宅での生活を支えきれなくなることがあります。このような場合、適切な介護ができる施設でのショートステイに、精神科医療の往診を組み合わせると、効果的な治療ができると思います。

 認知症の人に必要な医療を、必要に応じて「宅配」してくれる医療機関の整備が望まれます。(上野秀樹、海上寮療養所勤務)

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