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男性の更年期障害

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漢方薬 症状に応じて

 ストレスは男性ホルモンの分泌を妨げ、40~60代男性の「更年期障害」の引き金になる心配がある。仕事も家庭も心配事が多い中高年世代。男性も漢方をうまく使って乗り越えよう。

意欲低下・不眠など

 男性ホルモンには、筋肉や骨を作ったり、意欲を高めたりする働きがある。ホルモン分泌は20代が最も多く、加齢とともに低下し、その影響で40代から筋力低下や内臓脂肪の増加、性機能の衰えなどが表れる。意欲低下、不眠、うつ症状などに苦しめられることもある。

 血液中の男性ホルモン(遊離型テストステロン)が正常値より低い場合は、注射や軟膏(なんこう)でホルモンを補充する治療が選択肢となる。ただ、男性ホルモンは前立腺がんのリスクを高めたり、小さな血の塊が血管内に出来やすくなったりする心配があり、経過を見ていく必要がある。

 漢方は副作用が少なく、心身の不調の原因を突き止めることが出来なくても、体力や症状に応じて様々な薬が試せる。保険適用で医療費も安くすむ。これに対し、男性ホルモンの薬剤は保険がきく場合ときかない場合がある。

 長野市の長野赤十字病院で「男性更年期外来」を週1回開いている天野俊康さんは初期の治療として、女性更年期障害の3大漢方薬とされる「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」を中心に漢方を処方している。

 「ホルモン低下で生じる症状という点では、女性も男性も同じ。151人のデータをまとめた結果によると、約7割の患者で症状の改善が見られました」と話す。

 長野県内の40代後半の会社員男性は営業で成績を上げ、同県の事務所所長になった。しかし、不眠やイライラした気分に悩まされるように。体のほてりや頭痛などの症状もあり、内科で診てもらったが、原因は分からなかった。

 さらに気分が落ち込み、仕事に行けなくなった段階で、妻に連れられ、同病院の男性更年期外来を訪れた。血液中の男性ホルモンは正常値の半分程度と低かった。

 天野さんはまず男性に、不安や不眠などがある人に使う「加味逍遙散」を飲んでもらった。2週間後に来院した際「気持ちが楽になった」と男性は話したという。

 一層の症状改善の希望があるのを聞き、ホルモン剤を2~4週ごとに注射で補充する治療を行った。男性は間もなく職場に復帰した。

 天野さんは「仕事のストレスがホルモン低下を招き、症状を悪化させている面もある。漢方では薬の種類を決める際に患者の話をより丁寧に聞く。治療の入り口として最適」と説明する。

 東京都千代田区の神田医新クリニック理事長の横山博美さんも、男性ホルモンの補充などに加えて、漢方を多く取り入れている。

 「早く良くなりたいと焦っている患者にはホルモン剤を数週間使った後で、漢方薬に切り替えていくということもよくしています」(横山さん)

 冷え、のぼせ、動悸(どうき)など原因がはっきりしない体の不調と心の不安を訴える男性には、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が効果的であることが多い。また、やせて顔色が悪く、精神的にも疲れた様子が見える場合には、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)が適しているという。

 横山さんが話す。「治療で意欲が戻ったら、生活習慣の改善を。体内の脂肪は男性ホルモンの働きを妨げ、適度な運動はホルモン分泌を促します。1駅分歩くだけでもいい。予防を心がけてください」(渡辺理雄)

男性の更年期障害
 女性の更年期障害に倣った呼び名。男性ホルモンの低下による諸症状を日本泌尿器科学会は「加齢男性性腺機能低下症候群」(LOH症候群)として、2007年に診療の手引を発行している。筋肉の衰えや内臓脂肪の増加、不眠やうつなどの精神症状、性欲の低下などが表れる。
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